応用生態工学
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原著論文
景観構造がカヤネズミの生息率におよぼす影響
澤邊 久美子夏原 由博
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キーワード: landscape, grassland, GIS, GLM
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2015 年 18 巻 2 号 p. 69-78

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抄録

大阪府堺市において,丘陵地から平野部を含む 47 地点の調査地点を設け,本種の営巣調査を行った.草地のパッチスケールの要素(植物高,パッチ面積,草地タイプ,営巣植物被度)と,景観スケールの要素として半径 20,50,100,200,500 m のバッファ内における 5つ(樹林地,空地,水田,畑,草地)の土地利用の面積比率を説明変数とした.本種の生息に影響する要因とそのスケールを明らかにするため,巣の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析により,5 つのバッファごとに本種の生息確率を示すモデル選択を総当たり法で行った.営巣調査の結果,47 地点のうち 14 地点で巣を確認した.このうち攪乱が少ない草地タイプと,営巣植物の平均被度が高い草地で巣の確認地点数が有意に多かった.ロジスティック回帰分析の結果,総当たり法により最小 AIC との差が 2 未満のモデルについて検討した.その結果,本種の生息に影響を及ぼす空間スケールは,半径 500 m あるいはそれ以上であること,さらにそこに占める草地と水田の面積が生息に正の影響を及ぼす要素であることが明らかとなった.以上から,本種の生息適地は,行動圏よりも広い半径 500 m 以上のスケールで,草地と水田が多く存在する景観であり,その草地は営巣植物となるイネ科草本が優占する植生を維持するため最小限の攪乱を加え維持管理する必要がある.これらの条件で,小規模な半自然草地において本種の生息適地を把握し保全策を講じることが求められる.

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© 2015 応用生態工学会
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