応用生態工学
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原著論文
  • 小田 郁実, 根岸 淳二郎, 中路 達郎, 中村 太士, 石山 信雄, 宇野 裕美, 岩瀬 晴夫, 渡辺 恵三, 橋本 有悟, 澤崎 和也, ...
    2026 年28 巻2 号 p. 109-126
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/25
    [早期公開] 公開日: 2026/02/10
    ジャーナル フリー
    電子付録

    淡水環境の生態系は種多様性が高い特徴がある反面,気候変動や人為的影響による劣化も著しい.効果的な保全にあたり知見の集積が求められるが,山地氾濫原河川における研究は不足している.本研究では,山地氾濫原河川における魚類群集構造の時空間変動の規定要因の特定を目的とした.2021 年 8 月,2022 年 6 月,2022 年 9 月,および 2023 年 6 月の計 4 回,北海道ブトカマベツ川の中流域に数 100 m の縦断距離を有する 4 区間タイプ(上流・下流部それぞれに分流と本流タイプ)を設定し,流速・水深・水温などの生息環境と魚類群集の調査を実施した.区間タイプ間で生息環境が大きく異なり,下流部の分流区間タイプで,その他のタイプに比べて水面幅・水深などの環境の値が明瞭に小さかった.また,季節間では,晩夏になるにつれて水温上昇と流量減少し,2021 年夏季は例年よりも高水温・低流量であった.このような生息環境の差異に応じて,魚類群集構造には変異がみられた.下流部分流区間タイプは小型イトウやスナヤツメの生息地として機能していた.季節間では成長に伴う減耗が原因と思われるハナカジカやフクドジョウの大型個体の生息密度の変化などがみられた.また,年次間(2021 年 8 月から 2022 年 6 月,そして 2022 年 9 月から 2023 年 6 月の二期)の変動から,2021 年の夏季の影響を受けたハナカジカやイトウの小型個体(当歳)の生息密度が低下した傾向がみられた.したがって,ブトカマベツ川のような広い氾濫原を有する山地河川では,緩やかな流れの小さな分流や本流の多様な区間タイプの存在に加え季節や年次の時間的な環境の変化が魚類群集構造の時空間動態に影響することが示唆された.

  • 小山 彰彦, 乾 隆帝, 伊豫岡 宏樹, 皆川 朋子, 大槻 順朗, 鬼倉 徳雄
    2026 年28 巻2 号 p. 127-142
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/25
    [早期公開] 公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー
    電子付録

    本研究では球磨川水系河口域の潮間帯に設定した 94 定点に基づき,2012 年から 2020 年にかけての 9 年間における出水と底生生物の出現パターンの関係を解析した.底質の変化を評価した結果,シルトと粘土の割合が調査期間の中期から終期にかけて増加し,特に令和 2 年 7 月豪雨後の調査で特に高かった.つまり,調査期間中に潮間帯は細粒化が進行したと示唆される.底生生物の α多様性は大規模な出水が発生した年で低い値を示し,γ多様性は出水の規模と有意な負の相関を示したことから,底生生物の多様性は河川の出水に応答し,特に大規模な出水が発生した際に低下しやすいことが示唆された.加えて,底生生物 55 種の出現パターンの変動を評価した.その結果,出現パターンは 5 タイプに区別され,このうち,対象種の約 4 割に該当する 20 種が属したタイプは,年最大出水に対して有意な負の相関を有した.これら 20 種の特徴は,アナジャコ,ヨコヤアナジャコ,ニホンスナモグリ,およびこれらの巣穴を利用する共生種に加え,砂礫底や砂底を生息場とする種が主であった.加えて,調査期間中に単調的に出現数が減少したタイプも認められ,このタイプに属した 6 種のうち 4 種は主に砂底を生息場とする底生生物であった.これらの結果から,大規模な出水と経年的な底質の泥質化によって,砂質潮間帯生息場の減少と本生息場に依存する底生生物の減少が示唆される.今後,本水系で大規模な出水が発生した際には,砂底を生息場とする底生生物の生息状況をモニタリングし,その結果に応じた底質の改善を検討すべきである.

総説
  • 三浦 一輝
    2026 年28 巻2 号 p. 143-153
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/25
    [早期公開] 公開日: 2026/02/20
    ジャーナル フリー

    稚貝の新規加入の失敗はイシガイ目の減少の主要なプロセスの一つである.その主な原因として分断化と生息環境の質の劣化が指摘されてきた.前者は主に幼生期の宿主―寄生関係を阻害するが,後者は複数の生活史段階に負の影響を及ぼすことで新規加入を失敗させ得る.しかし,生息環境の質の劣化によるイシガイ目の新規加入の失敗と生活史段階の関係に関する理解は乏しい.本論では,イシガイ目の減少の主要な劣化要因である水質および底質の汚染(まとめて汚染と呼ぶ)に着目し,新規加入失敗と生活史段階の関係について整理することで,イシガイ目の保全に資する情報を提供することを目的とした.イシガイ目は成貝期,幼生期,稚貝期の 3 つの主要な生活史段階の一つあるいは複数が制限を受けることで新規加入が失敗する.これまで,これらの生活史段階の一部,あるいは 3 つの包括的な評価により,汚染による新規加入の制限段階が特定されてきた.これまでに,幼生期と稚貝期が主な制限段階になる事例が複数報告され,中でも稚貝期が汚染に脆弱であることが認識されてきている.最近では,主要な生活史段階の包括的な評価による制限段階の特定に加え,汚染要因の複合ストレス機構が新規加入に与える影響も検証されている.Miura et al. (2023)の事例では,幼生期と稚貝期が同時に制限段階となること,2 つの汚染要因の複合ストレス機構が働くことで,稚貝期の生残率が相乗的に低下することを示した.これらの事例を踏まえると,イシガイ目の保全において,新規加入の制限段階を特定することに加え,汚染を含めたストレス要因の複合ストレス機構の有無に配慮する必要が強調された.今後の研究課題として 1)複合ストレス機構が主要な生活史段階に与える影響の更なる検証と,2)評価が不十分な地域,種における個体群現況の把握と継続的なモニタリングの実施が必要と考える.

事例研究
  • 小和田 侑希, 中泉 拓海, 北村 亘
    2025 年28 巻2 号 p. 155-160
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/25
    [早期公開] 公開日: 2025/12/25
    ジャーナル フリー

    都市化に伴い,生物の生息域が減少する中,多様な生物が利用可能な緑地の創出が重要視されている.特に都市域では,生物多様性の保全と住民の利用価値を両立した緑地が求められる.ニホンカナヘビ Takydromus tachydromoides Schlegel は日本固有のトカゲで,都市公園の小規模緑地に生息可能な保全目標種とされている.しかし,東京都では本種の生息数が減少し,絶滅危惧種に指定されているため,生息環境の整備が必要とされる.本研究では,東京都八王子市の長池公園内でニホンカナヘビの個体数や餌生物の分布を調査し,好適な生息環境を明らかにした.草丈の異なる 3 つの調査地で観察した結果,成体・幼体ともに草丈 1 m 程度の草地(調査地 1)で最も多く確認され,昆虫類,特にバッタ目が豊富であることも生息に関与していると考えられた.また,調査地 1 は日光浴が可能な開けた環境であり,捕食者からの逃避にも適していたことが示唆された.季節変動としては,成体は 4-7 月に増加し,8 月に減少,9 月に再び増加する傾向が見られた.この変動は,気温や繁殖期の影響を受けた可能性があるが,データ不足からその特定には至らなかった.本研究はニホンカナヘビの生息条件に関する知見を提供するが,気温や時間帯,その他の要因を含むさらなる調査が必要である.

  • 安井 弘, 服部 昭尚
    2026 年28 巻2 号 p. 161-172
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/25
    [早期公開] 公開日: 2026/02/10
    ジャーナル フリー

    琵琶湖流出河川(瀬田川)の最上流部において護岸と浚渫が施された瀬と淵に注目し,サギ類を除く水鳥(冬鳥)の種組成と優占種,種多様性,行動を比較した.2020 年 12 月から翌年 2 月に 21 回,雨天を除く正午に 1 時間半,右岸を上流から歩き,双眼鏡や望遠鏡を用いて水鳥を探索し,印刷した Google Earth 画像[人工物や河畔林などから 11 区画(同一面積の 8 区画他)を設定]上に種名,発見地点,個体の行動(潜水採餌,倒立採餌,水面採餌,休息,移動,その他)を記録し,Shannon の多様度指数 を求めた.瀬で 11 種(浅場利用者のオオバン,ヒドリガモ,カルガモ,オカヨシガモ,マガモ,ハシビロガモ;深場利用者のホシハジロ,キンクロハジロ,カワウ,カンムリカイツブリ,ユリカモメ),淵で 9 種(ユリカモメとハシビロガモ以外)が見られ,オオバンが優占種であった.平均種数に瀬淵間で有意差はなかったが, の平均値には瀬淵間で有意差があった.瀬淵共に航路維持のため深さ 7.5 m の浚渫が施され,水面採餌と潜水採餌が見られた.淵の攻撃斜面対岸の浅瀬に沈水植物コウガイモの大群落(水深 2 m 程度)が存在し,オオバンの個体数が非常に多く,水面採餌と潜水採餌は見られたが倒立採餌は見られなかった.浅場利用者の倒立採餌は瀬の一部でマガモ,カルガモ,オカヨシガモの少数個体にのみ見られた.中洲の存在は水深構造を複雑にするため,瀬では特定の水深の浅場で繁茂する沈水植物群落の規模は小さくなり,これらを餌とする種の個体数が増えないものと考えられる.多様度指数と水深構造及び河岸の構造物の特徴の分析を結びつけることにより,河川改修後にも水鳥の多様性を高める要因を推察することができた.

レポート
  • 浅見 和弘, 鎌田 健太郎, 大林 直, 平岡 康介, 岩瀬 秀一, 葛西 信智, 今野 浩一, 茅原 大佑
    2026 年28 巻2 号 p. 173-183
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/25
    [早期公開] 公開日: 2026/02/10
    ジャーナル フリー

    山形県最上川水系に位置する白川ダム,長井ダム,寒河江ダムの流入河川,下流河川各 2 地点,及び最上川本川 5 地点,計 17 地点で,底生動物調査を行った.当該地域では 2012 年から 2023 年までの 12 年間に 2 ~ 3 回,河川水辺の国勢調査に基づき,同一地点・同一手法で,調査を継続している.当該地域では 2020 年や 2022 年に既往最大流入量,水位を記録した.そのため,本レポートでは,2020 年や 2022 年の出水の影響に着目し,2023 年の定量採取のデータを基に底生動物の応答を把握することとした.出水による底生動物への影響は,EPT 種数,総個体数,湿重量,匍匐型個体数,造網型個体数,類似度指数に着目した.その結果,既往最大を記録した後の 2023 年で減少傾向は認められなかった.2012~2018 年,2018~2023 年の変化率をみても,統計的な有意差はなかった.出水からの時間経過と規模をみると,調査前の 1 か月,2 ~ 3 か月の間に出水規模(ここでは,最大流量 / 年中央値)との関係で,統計的な有意差はないものの弱い負の相関傾向がみられた.それより時間が経つと攪乱規模との相関はほぼなかった.2023 年の調査は既往最大出水より 1 ~ 3 年を経ており,今回調査対象とした最上川水系 3 ダムと本川 5 地点では出水の影響と考えられる現象は認められなかった.

  • 田和 康太, 西廣 淳, 伊藤 雪穂
    2026 年28 巻2 号 p. 185-198
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/25
    [早期公開] 公開日: 2026/02/10
    ジャーナル フリー

    筆者らは,耕作放棄水田に洪水を貯留した際に,そこに生息する動物の行動を把握するため,千葉県富里市の耕作放棄水田を一時的に冠水させ,冠水後の動物の行動を市民参加型調査によって調査した.併せてアンケートにより,参加者の調査に関する満足度,そして防災・減災に関する学びの実感を調査した.湛水開始から 30 分後の 1 時間と湛水開始から 3 時間後の 1 時間を動物の観察時間とした.後日,各班の記録と動物の写真を照合してデータのスクリーニングを行い,動物の行動を垂直移動,水平移動,飛来の 3 パターンに分類した.調査の結果,9 班 18 名の市民調査員から 20 目 88 分類群の動物に関する 325 件の観察記録が得られた.節足動物の分類群数が全体の 93%を占めた.各班の記録件数について,浸水直後のほうが浸水から 3 時間よりも有意に多かった.この要因として,浸水からの時間経過により,動物の移動が完了したことが考えられた.分類群と冠水に対する動物の行動が読み取れた記録は,187 件(58%)だった.このうち,垂直移動が 101 件,水平移動が 78 件,飛来が 8 件だった.垂直移動と水平移動の両方で記録数が最も多かったのはコウチュウ目だった.クモ目,バッタ目,カメムシ目,チョウ目,ハチ目も垂直・水平移動の記録数が比較的多かった.トンボ目のアカネ属には冠水時に形成された水域に飛来し,産卵行動を示す個体も観察された.また,同一種であっても,水平移動と垂直移動の両方が観察されることがあった.この結果は,対象種が冠水時にいた微小環境や到達した場所に伴い,受動的あるいは能動的な洪水回避行動が異なることが一因であると考えられる.調査では,短期間に多くのモニタリングデータを得ることができ,アンケート調査の結果から,回答者全員が調査プログラムに関して一定以上の満足度を実感していた.そのため,本調査プログラムは研究者と参加者どちらにもメリットを生み出すことができたと評価できる.

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