筆者らは,耕作放棄水田に洪水を貯留した際に,そこに生息する動物の行動を把握するため,千葉県富里市の耕作放棄水田を一時的に冠水させ,冠水後の動物の行動を市民参加型調査によって調査した.併せてアンケートにより,参加者の調査に関する満足度,そして防災・減災に関する学びの実感を調査した.湛水開始から 30 分後の 1 時間と湛水開始から 3 時間後の 1 時間を動物の観察時間とした.後日,各班の記録と動物の写真を照合してデータのスクリーニングを行い,動物の行動を垂直移動,水平移動,飛来の 3 パターンに分類した.調査の結果,9 班 18 名の市民調査員から 20 目 88 分類群の動物に関する 325 件の観察記録が得られた.節足動物の分類群数が全体の 93%を占めた.各班の記録件数について,浸水直後のほうが浸水から 3 時間よりも有意に多かった.この要因として,浸水からの時間経過により,動物の移動が完了したことが考えられた.分類群と冠水に対する動物の行動が読み取れた記録は,187 件(58%)だった.このうち,垂直移動が 101 件,水平移動が 78 件,飛来が 8 件だった.垂直移動と水平移動の両方で記録数が最も多かったのはコウチュウ目だった.クモ目,バッタ目,カメムシ目,チョウ目,ハチ目も垂直・水平移動の記録数が比較的多かった.トンボ目のアカネ属には冠水時に形成された水域に飛来し,産卵行動を示す個体も観察された.また,同一種であっても,水平移動と垂直移動の両方が観察されることがあった.この結果は,対象種が冠水時にいた微小環境や到達した場所に伴い,受動的あるいは能動的な洪水回避行動が異なることが一因であると考えられる.調査では,短期間に多くのモニタリングデータを得ることができ,アンケート調査の結果から,回答者全員が調査プログラムに関して一定以上の満足度を実感していた.そのため,本調査プログラムは研究者と参加者どちらにもメリットを生み出すことができたと評価できる.
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