2018 年 20 巻 2 号 p. 167-177
宍道湖は,湖沼水質保全特別措置法の指定湖沼となっている汽水湖である.宍道湖では湖へ流入する汚濁負荷は減少しているが,湖水の化学的酸素要求量(COD)は増加している.この原因を明らかにするため,我々は COD に影響を与える可能性がある環境因子を用いて重回帰分析を行った.その結果,二枚貝ヤマトシジミ(Corbicula japonica)の漁獲による系外への COD 除去量の減少が宍道湖の水質改善の妨げになっていることが明らかとなった.これまで指定湖沼の水質改善は,栄養塩流入負荷の削減によって達成されると考えられてきた.湖沼水質の効果的な管理・保全を行う上で,生物を通じた物質循環が湖沼水質に与える影響を考慮することが不可欠であることが示された.