応用生態工学
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短報
琵琶湖流入河川におけるアユの産卵場の表面硬度の特徴
水野 敏明東 善広北井 剛小島 永裕
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2019 年 22 巻 1 号 p. 93-101

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抄録

琵琶湖流域では,近年アユの産卵数が減少し,特に 2017 年の産卵数は少なかった.そのため,アユの産卵場を改善することが喫緊の課題となっている.アユは水の流れでゆらぐような「浮き石状態」の河床を産卵場として選択する.そのため,産卵場の表面の河床硬度を評価して,産卵場改善することが必要とされている.既存研究におけるアユの産卵場の河床硬度の定量化は,シノや長谷川式土壌貫入計で行われてきたが,精度や再現性に欠点があった.そこで,これまで利用されてこなかった山中式土壌硬度計を用いて,アユの産卵場の表面の河床硬度を高精度に評価することを研究目的として実施した.調査は 2014 年 9 月に安曇川,塩津大川,姉川,愛知川の 4 つの琵琶湖流入河川の砂州縁辺の水際のアユの産卵場の河床露出部で行った.調査の結果,河床硬度の中央値は,産卵場が 0.22 kgf/cm2 であった.また非産卵場は 1.40 kgf/cm2 であった.産卵場と非産卵場では U 検定で統計的に 5%有意で差異があった.さらに, 混合効果ロジスティック回帰モデル式による河床硬度と産卵の有無の統計解析の結果,河床硬度が 1.0 kgf/cm2 以下になれば産卵確率が 40%以上になる傾向がモデル式から示された.最後に,山中式土壌硬度計と他の測定方法の違いと利点や,水中の産卵場の河床硬度との比較の必要性など,山中式土壌硬度計によるアユ産卵場の河床硬度の評価方法についての有用性や今後の課題について考察した.

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