2020 年 23 巻 1 号 p. 99-107
これまで小規模な河川工事等でのオオサンショウウオの保護事例は多数あるが,今回のようにダム本体工事で,大規模に河川を転流し,オオサンショウウオを保護した事例はない. 今回の転流で,これまでの調査で発見が難しいとされてきた「孵化幼生後の幼生」を 36 個体保護した.これらの個体の保護場所は大きな石の下部が平らで出入りする隙間がないような環境,水際河岸(ヨシやササの浮き根等)であり,改めて,孵化幼生後の幼生の保護の際は,このような環境を重点的に調査する必要性が明らかになった.また,保護したタイミングは干し上げによる水位低下後が大半であったことから,水を抜いて調査することの重要性が再確認された. 今回の転流時におけるオオサンショウウオの確実な保護の取り組みは今後の類似事業にも適用できる可能性が高く,大いに参考になるものと考えている. なお,川上ダムでは 2021 年度の試験湛水実施まで,引き続き湛水予定区域内のオオサンショウウオの保護を継続している.