2026 年 28 巻 2 号 p. 109-126
淡水環境の生態系は種多様性が高い特徴がある反面,気候変動や人為的影響による劣化も著しい.効果的な保全にあたり知見の集積が求められるが,山地氾濫原河川における研究は不足している.本研究では,山地氾濫原河川における魚類群集構造の時空間変動の規定要因の特定を目的とした.2021 年 8 月,2022 年 6 月,2022 年 9 月,および 2023 年 6 月の計 4 回,北海道ブトカマベツ川の中流域に数 100 m の縦断距離を有する 4 区間タイプ(上流・下流部それぞれに分流と本流タイプ)を設定し,流速・水深・水温などの生息環境と魚類群集の調査を実施した.区間タイプ間で生息環境が大きく異なり,下流部の分流区間タイプで,その他のタイプに比べて水面幅・水深などの環境の値が明瞭に小さかった.また,季節間では,晩夏になるにつれて水温上昇と流量減少し,2021 年夏季は例年よりも高水温・低流量であった.このような生息環境の差異に応じて,魚類群集構造には変異がみられた.下流部分流区間タイプは小型イトウやスナヤツメの生息地として機能していた.季節間では成長に伴う減耗が原因と思われるハナカジカやフクドジョウの大型個体の生息密度の変化などがみられた.また,年次間(2021 年 8 月から 2022 年 6 月,そして 2022 年 9 月から 2023 年 6 月の二期)の変動から,2021 年の夏季の影響を受けたハナカジカやイトウの小型個体(当歳)の生息密度が低下した傾向がみられた.したがって,ブトカマベツ川のような広い氾濫原を有する山地河川では,緩やかな流れの小さな分流や本流の多様な区間タイプの存在に加え季節や年次の時間的な環境の変化が魚類群集構造の時空間動態に影響することが示唆された.