本研究では,イギリスで開発された河川環境評価手法であるRHSとHQAを用いて,円山川を対象にその適用性について事例研究を行った.対象区間は直轄区間0-26.5Kpとし,感潮の有無から,0-16Kpを上流域,16-26.5Kpを下流域に分け,RHS·HQAの項目に従い,既存の資料(環境情報図,植生図,空中写真,地形図など)や現地調査により,データを記録した.その結果,土地利用形態,河畔林と河畔植生,河岸の人工度的な改変の程度,樹木の連続性と土地利用の関連などの項目から,RHS·HQAにより,上·下流域にみられる特徴を定量的に示すことができた.このような特性を整理した後,今後の自然再生計画のための保全·再生箇所の抽出を検討するため,RHSによる場の希少性やHQAスコアの高低からその考え方を例示した.さらに,本報では,RHS·HQAのさらなる活用の可能性をみるため,HQAのスコアとコウノトリの関連性について評価を行った.その結果,HQAスコアの高いサイトが必ずしもコウノトリの選好場の特性を有しているわけではないことが分かった.しかし,コウノトリの飛来状況とRHSの調査データとの比較することにより,コウノトリは草地や砂州の多い場所に飛来するものの,河岸沿いに樹林が連続的に見られる箇所には飛来しないことを定量的に明らかにすることできた.この結果を利用することで,現在,飛来が確認されていないが,潜在的には利用可能性が高い箇所の抽出が可能であることが示せた.重要種の保全を念頭に置いた環境修復を行う際には,このような潜在性の高い箇所周辺を重点的に修復すると共に,全体とのバランスについても同時に留意することが望まれる.RHS·HQAは,このような要請に応えうる評価手法であることが示された.