応用生態工学
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原著論文
湿原における植生―立地環境の関係解析のための水位環境指標値
藤村 善安冨士田 裕子加藤 邦彦竹中 眞柳谷 修自
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2006 年 9 巻 2 号 p. 129-140

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抄録
湿原における植物群落と水位環境の対応関係を明らかにすることを目的に, 1時間に1回の水位測定を行った. 測定は北海道東部に位置する釧路湿原において, 後背湿地に成立しているハンノキ林, 河川の自然堤防上の群落 (河辺草本群落) および後背湿地の草本群落 (湿性草本群落) で2002年の5-10月にかけて行った. 解析では水位変動の頻度, 変動幅, 季節的な変動をそれぞれ独立に指標する値を用いて, 群落間の比較を行った. また植物群落と立地環境を対応づけるための適切な指標値を明らかにするため, 水位環境を示す様々な値の相互関係を調べた.
群落間の比較から, ハンノキ林に対して, 河辺草本群落は変動頻度や変動幅の大きい地点に, 湿性草本群落は春から夏にかけての水位上昇の大きい地点に, それぞれ成立していることが分かった. このことは水位変動を変動頻度や変動幅, 変動の季節性などに分けて考える必要があることを示している.
水位測定値の標準偏差は変動頻度, 変動幅および季節的な変動のそれぞれと強い相関があった. このことは標準偏差によって表される水位変動には, 変動頻度, 変動幅, 変動の季節性の全てが含まれていることを示している. また変動頻度と変動幅に強い相関がみられたのに対して, 季節的な変動は独立性の高い値であった. このことから植生との関係を解析する際の水位に関わる指標として, 不連続な測定を行った場合でも, 季節的な変動を示す値, 変動幅を示す値を用いることが有効であることが示された. また水位変動の指標値としての標準偏差は, 変動の頻度, 変動幅, 季節的な変動を含む指標であり, それらを別々に表解することが可能な場合には用いるべきでないと考えられた.
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© 2006 応用生態工学会
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