論文ID: 21-00018
水田生態系における生物多様性保全機能の重要性が広く認識されるようになり,水田地域に何かしらの水域を通年維持することの重要性が知られてきている.本研究では福井県小浜市国富地区に造成された水田退避溝における魚類の遡上および降下を報告する.海域に近い本地区の水田退避溝は,ドジョウおよびオオシマドジョウ(純淡水魚)が産卵場所としてだけでなく越冬場所として利用していた.ウグイ,ウキゴリ(回遊魚)およびマハゼ(汽水・海産魚)が成長場所としてだけでなく越冬場所として利用している可能性が示唆された.つまり,河川や排水路および海と比較して環境変化が小さい水田退避溝は,多くの魚類にとってゆりかごになっていると考えられる.