応用生態工学
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琵琶湖周辺の内湖における魚類相の変化と生息環境分析
在来魚の繁殖・生息の場としての生態的機能の復元に向けて
美濃部 博桑村 邦彦
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2001 年 4 巻 1 号 p. 27-38

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抄録

琵琶湖周辺の内湖の機能のうち,在来魚の繁殖・生息の場としての生態的機能に着目し,8内湖における魚類相の変化とその要因を考察した.
小津袋(守山市)の魚類相は1960年代から1990年代にかけて大きく変化しており,琵琶湖の固有種中心の魚類相から,固有種が姿を消し他の在来種に置き換わり,さらに現在では外来種であるブルーギルが優占していた.他の内湖の魚類相の状況も同様であった.西の湖と堅田内湖だけは他の内湖と異なり,在来種を含む均衡した魚類相を示していた.
このような魚類相の変化要因としては,閉鎖性の高い水域における外来魚の在来魚に対する淘汰圧が大きいこと,および制限水位方式による洪水期(6~10月)の水位低下により,在来魚の産卵場や仔稚魚の成育場である水深が浅くて奥行きのある抽水植物帯が干陸化したことが挙げられる.
今後,内湖の多様な魚類相を復元していくためには,沿岸の抽水植物帯の奥行きだけでなく,湛水した水生植物帯を維持するための水位条件が十分配慮されなければならない.なお,湖岸の大半が人工化されているにもかかわらず多様な魚類相を保つ堅田内湖の魚類の生息環境分析を進める必要がある.

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