応用生態工学
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鬼怒川砂礫質河原の植生と外来植物の侵入
村中 孝司鷲谷 いづみ
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2001 年 4 巻 2 号 p. 121-132

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抄録

鬼怒川の周辺地域の土地利用の異なる中流域の7カ所の砂礫質河原で植生調査を行い,河原固有植物の分布および外来植物の侵入の現状を把握した.調査した7カ所の河原の植生は種組成の類似性比率によらて,上流側(5カ所)および下流側(2カ所)の2つのグループに分類された.河原固有種および外来種の出現頻度は2つのグループできわだった違いを示した.下流側の調査地には河原固有種はほとんどみられず,セイタカアワダチソウの出現頻度が高かった.それに対して,上流側の調査地にはカワラバハコ,カワラヨモギ,カワラノギクなどの河原固有種が優占する植生が残されていたが,外来牧草シナダレスズメガヤが高い出現頻度を示した.種組成の違いは冠水頻度や基質タイプなどの環境要因の違いでは説明できず,周辺地域の土地利用や河川における位置の違いなどが潜在的種子供給量の違いを介して植生の現状に違いをもたらしている可能性が示唆される.河原固有種が残されている上流側サイトでは,カワラハハコカワラニガナ,カワラノギクはシナダレスズメガヤとの共存度が低く,シナダレスズメガヤの侵入が基質タイプの改変や被陰を通じて河原固有種の生育適地を縮小させている可能性が考えられる.

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