抄録
潮汐作用と河川流量という物理作用から,長良川河口堰下流部の貧酸素水塊形成の基本的な過程を整理した.堰運用前後に共通した特徴は,底層DOの変動が大潮・小潮のサイクルに応じた変動を主体とし,河川流量変動に伴う撹乱が重なって生じている点である.大規模出水時には,底層DO濃度は増水時に一時的に増加するが,流量が低減した後には極端な高塩分化に伴った貧酸素化が生じることが多い.これは,伊勢湾奥部に形成された貧酸素水塊の遡上によって生じる.堰運用前後の違いは,主として混合形態の差によって生じている.堰の運用前では,大潮時には強混合であり,混合が活発化し貧酸素化が解消されていた.しかしながら,運用後には大潮時でも緩混合的であり,鉛直混合は不十分で,表層・底層の水質に差が見られ,貧酸素化の回復が不十分である.