抄録
本報では自然共生研究センターにおける研究活動の取り組みを紹介し,実験河川で実施した魚類の生息とハビタットに関する研究を事例研究として報告した.ここでは,河道を横断方向に流水域と水際域に区分し,流水域においては早瀬,淵,平瀬,とろの4つに,水際域においては植生の有無の2つにハビタットを分類した.これらの組み合わせによりハビタットを類型化し,実験河川内の魚類の生息量との関係を分析した。その結果,流水域に早瀬と淵が存在する場合は生息量が有意に大きかった.また,水際植生の有る場合は無い場合に比べて生息量が増加する傾向が見られたが,その増加量は早瀬と淵が存在する場合に比べて小さかった.本結果は,中流域の多自然型川づくりを考える上で流水域のハビタットが重要な保全対象であることを示唆している.