2019 年 38 巻 38 号 p. 93-99
「自制力」「初期設定」「極端性回避」「ナッジ」という4つの概念から中学校経済学習における「行動経済学」の可能性を考える。「自制力」は,年金の支払いや貯蓄等の経済活動や喫煙,中退などにも影響を与える概念である。「初期設定」は,臓器移植やジェネリック薬品などの医療問題との関係から考察することができる。そして,「極端性回避」からは,市場原理による価格決定の隙間を埋める実践が可能である。「ナッジ」は「肘で軽くつつく」という意味合いがあり,世の中を,変えることも可能な概念であるが,誘導により改善するという点からは課題がある。以上4つの事例から中学校経済学習での行動経済学の有効性と限界を検証する。