Edaphologia
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寒冷地積雪下において繁殖あるいは成長するトビムシ
松本 直幸須摩 靖彦小池 孝良
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2018 年 102 巻 p. 11-21

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抄録

ニッポンシロトビムシ,ホソゲツチトビムシ,およびベソッカキトビムシの 3 種は積雪下で活動することが明らかになった.ニッポンシロトビムシは,落葉広葉樹林において,積雪下に設置した菌類トラップから優占的に採取された.その体長は,2 月下旬で平均 0.72 mm,その後も同調的に増加し,4 月上旬には 2 mm となった.ニッポンシロトビムシは夏期にはまったく検出されなかったので,一化性と考えられた.ホソゲツチトビムシとベソッカキトビムシは,積雪下において火山礫の地面に生える地衣類 Cladonia sp. から頻繁に採取された.ホソゲツチトビムシでは,10 月に小型個体が出現し 5 月の平均体長は 2 mm 以上に達し,常に中腸の充満した個体が含まれていた.本種も夏期にはまったく採取されず,一化性と推定された.ベソッカキトビムシの平均体長は 2014 年 12 月で 0.82 mm,2015 年 3 月には 0.72 mm と,積雪下で減少した.また 3 月には,前年 12 月にほとんど観られなかった 0.69 mm 以下の小型個体が大半を占めた.しかし翌冬には,明確な平均体長の減少は観察されず,2016 年 1 月の少雪が関与していると考えられた.さらに,20.1–40.3% の割合で 0.96 mm 以上の大型個体が常に存在した.このように,ベソッカキトビムシの個体群構造は積雪条件に影響されると考えられた.ベソッカキトビムシでは,両冬とも 12 月に中腸の満たされた個体は観察されなかったが,3 月には中腸の満たされた個体が観られた.すなわち本種は,冬期前半休眠し後半になって摂食し,積雪条件が好適な場合には繁殖すると推定された.以上のことから,これら 3 種のトビムシは積雪下においてもそれぞれ異なったやり方で活動していることが明らかになった.

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© 2018 日本土壌動物学会
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