教育社会学研究
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論稿
児童的振る舞いの観察可能性
―「お説教」の協働産出をめぐる相互行為分析―
粕谷 圭佑
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2018 年 102 巻 p. 239-258

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抄録

 本稿の目的は,学校の「お説教」場面において,子どもたちがいかにして場面に即した形で「児童としての適切なふるまい」を組織しているのかを明らかにし,そこから「児童になる」こと,すなわち「学校的社会化」のあり様を検討することである。上記の目的のために,本稿では,小学校6年生の教室で生起した「お説教」場面における教師―児童間の相互行為を分析する。その際,サックスの社会化論を参照し,子どもの相互行為能力としての「観察可能性の提示」と「カテゴリーの理解」に着目した。
 分析の結果,「お説教」場面では,児童らは,教師によって方向付けられ,教師によって想定された反応を提示することによって,自らを「お説教を従順にうける児童」として観察可能にし,「非お説教」場面や「お説教」が収束に向かう場面では,教師の想定外の反応を提示することで,「教師と親密に話す児童」として,自らを観察可能にしていた。これは,児童らが学級というローカルに組織されたカテゴリーに結びついた活動と期待の複層性を把持しているということである。こうした分析結果を踏まえ,本稿では,子どもが学校の中で「児童」となる「学校的社会化」は,個別具体的なクラス(=教師と児童集団)の日々の営みの中に埋め込まれており,日常の実践的関心においては,「観察可能性」の調整が適切なものとして前景化していることを指摘した。

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© 2018 日本教育社会学会
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