教育社会学研究
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論稿
学習と居場所のディレンマ:
非営利学習支援団体からみえる子どもの貧困対策の限界
成澤 雅寛
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キーワード: 貧困対策, 排除,
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2018 年 103 巻 p. 5-24

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抄録

 従来の教育社会学的研究は,子どもの貧困に関して不利伝達のメカニズムやその実態を明らかにしてきた一方で,貧困対策としての支援が盛り上がる中で社会学的に考察することが重要となってきているにもかかわらず,そのような支援を行っている団体について検討してこなかった。貧困の連鎖を防止するための施策として打ち出されている学習支援事業を対象にし,貧困の対策という側面を検討することが,貧困の再生産メカニズムを検討するうえでも重要である。
 そこで本稿は,貧困対策として教育活動を行う非営利の学習支援団体を対象として,その意義と支援の限界を明らかにすることを目的とした。本稿ではこれまで支援上の困難が指摘されてきた学習支援と居場所づくりの相互関連に着目しながら,教育支援研究において指摘されてきた各支援団体特有の排除という視点から分析を試みた。
 その結果,貧困対策としての学習支援は,多様な貧困層の進学を可能とする点で意義があり,さらに「居場所づくり」を行うことによってより多様な層の包摂を可能としていたが,「居場所づくり」を行うほど「学習支援」という目的を果たせなくなり,その一方で「学習支援」に特化すると学習不適応層を排除せざるを得なくなっていた。
 最後にこのような貧困対策としての学習支援の限界について考察,本稿の結果から得られる示唆と残された課題について検討した。

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© 2018 日本教育社会学会
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