教育社会学研究
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論稿
オルタナティブスクールの連携の技法:
傘となる集合行為フレームの創発過程
藤根 雅之
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2019 年 104 巻 p. 237-257

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抄録

 学校教育と学校以外の組織の連携が重視されている。先行研究では,連携の成功要因を理念・目的の共有とする議論と,連携によって学校以外の組織が学校化してしまう危険性の議論がなされている。本稿は,組織間の多様性を尊重した連携の可能性を考察するために,オルタナティブスクール同士の連携を事例にその実践者の技法を集合行為フレームを枠組みに明らかにする。
 得られた知見は以下の通りである。まず,それぞれの組織が掲げる集合行為フレームは多様である。連携してネットワークを組んでいるにも関わらず,互いを差異化・批判し合う。そして,それぞれの実践者は,他の組織との連携において,子ども・若者に合う他の組織を紹介できることにメリットを見出すのであるが,紹介することで自身の組織が選ばれないという事態から,自身の組織の集合行為フレームの正当性に揺らぎを経験する。それに対し実践者は「不完全性の積極的肯定」という傘となる集合行為フレームを構築する。自組織で全ての子ども・若者を「抱え込む」ことは当事者の不利益になると語られ,自身の組織が不完全であるというフレームによって他の組織との連携の必要性が正当化される。
 以上より,学校的な教育の理念や目的から距離をとる/とらざるを得ない子ども・若者の学習権の保障という観点から,学校教育とは異なる理念や目的や文化からなる組織の存在を肯定し,それらを同化させるのではなく,その間の調整を行う傘となる集合行為フレームの構築の重要性を指摘した。

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© 2019 日本教育社会学会
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