教育社会学研究
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地方教育政策における政治過程
橋野 晶寛
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2020 年 106 巻 p. 13-33

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抄録

 この20年あまりの間に進行した政治環境に関する大きな変化として,執政府の長における制度的な権限強化が観察された。そうした制度改革は国レベルでは政治主導,地方レベルでは首長主導を企図したものであり,応答性,政策の総合性という価値を重視したものとして解釈できる。本稿では,2014年の地方教育行政法の改正による新教育委員会制度発足を契機とした首長の教育政策への関与について実証分析を行い,その知見をふまえて教育政策と政治の関係に関する今後の研究課題の視点を提示する。
 都道府県レベルの教育政策を対象とした実証分析では,新教育委員会制度下での地方教育行政に対する首長の影響力の増大は部分的にとどまることが明らかにされた。有権者と首長の間の委任・応答関係においては,以前よりも,首長が教育政策を重要政策として位置づけるようになり,選挙を通じた政策選択の機会が増えた。一方で,首長と教育委員会の間の委任・応答任関係について言えば,総合教育会議における協議事項は,必ずしも個別の施策に関する首長の政策選好を反映しておらず,現時点では,新制度下においても教育委員会に一定の自律性が存在している。
 選挙の役割が大きい多数主義型民主主義において,教育に関する政策形成・決定を政治に位置づけることは可能か,専門性をどのように統合しうるか,という点に関する考察が今後の課題として挙げられる。

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© 2020 日本教育社会学会
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