2021 年 108 巻 p. 123-138
国際比較が盛んなグローバル社会の中,台湾では,日本教育への研究関心は常に高い。これまでの教育改革では,アメリカを中心とした欧米圏の教育からの影響が高かったが,近年,「学びの共同体」をはじめとする日本の教育からの影響も無視できなくなっている。本稿では,比較教育学の視点から,日台比較教育研究の目的と意義を再吟味し,今後の可能性を明らかにすることを目的とする。分析の結果,比較教育学における方法論の論争の中で,地域的に限定され,文化的な類似性を前提にした「統制された比較法」による日台を含むアジア圏の国々との比較教育研究は,その解決の糸口になれると考えられる。さらに,先住民教育政策という事例分析を通じ,日台比較教育研究から見出せる両国の特徴から,相互の教育改革への一定の示唆を与えることも期待できる。