2021 年 108 巻 p. 19-38
本稿は,計量的な社会学研究を事例として,日本と他のアジア社会との比較研究はいったい何をなし得るのか,またそのさらなる可能性を追求するためには,どのような点に留意しながら研究を進めていけばよいのかを,いわば研究の舞台裏に当たる部分にも積極的に触れながら検討していく。本稿ではまず,コーン(Kohn)の分類に基づき,比較社会研究の類型を確認した後,具体的な研究事例に即して,アジア比較社会研究が何を目的としており,具体的に何を行っているのかを,知見の導出プロセスにまで踏み込みながら考察する。さらに計量的な比較社会研究には,調査票の翻訳過程にも,社会間の微細な差異を見出し,それぞれの社会の特徴に関して新しい研究を進めるための契機が存在していることを,筆者が経験した2005年SSM調査プロジェクトの韓国調査を事例に論じる。また比較社会研究の契機は,さまざまな媒体を通じた社会間接触や社会間関係に着目することによっても得られることが示される。これらを通じ,大枠では類似しながら細部は微妙に異なる日本と他のアジア社会との比較研究は,私たちが自明視してしまっている想定や価値観の相対化を通じて,新たな研究を進めていくための契機をもたらしてくれるのみならず,理論的な貢献や,日本社会研究の国際発信への寄与など,多くの大きな意義を持つものと結論付けられる。