教育社会学研究
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論稿
高校生の学校適応と社会文化的背景
──学校の階層多様性に着目して──
古田 和久
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2012 年 90 巻 p. 123-144

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抄録

 本稿は OECD「生徒の学習到達度調査(PISA)」の2003年調査を用いて,日本の高校生の学校適応を検討した。生徒の学校適応の指標として学校帰属意識と遅刻回数を取り上げ,学校レベルおよび生徒レベルの特徴が適応にどのような影響を与えているのかを階層線形モデルにより分析した。主な結果は次の通りである。第1に,出身階層は個人レベル/学校レベルおよび2つの従属変数で若干異なるものの,生徒の学校適応に影響している。第2に,学校ランクによって生徒の意識や行動が異なり,上位ランク校の生徒は帰属意識が強く遅刻回数も少ない。第3に,学校内で学力や教育期待の相対的位置が低ければ,不適応を起こしやすい。第4に,学校内の相対的位置から生じる不満は,ランクや平均的な出身階層が高い学校で生じる傾向が強い。つまり,上位ランク校では学校の位置それ自体による不満は小さいが,学校内の競争的環境により疎外感を強める傾向にある。第5に,学校の出身階層多様性は学校適応に負の影響を与えている。家庭背景を軸に高校生の生活構造や意識,態度に大きな違いが生じ,それに沿ってインフォーマル集団が形成されているとすれば,異なった背景を持つ生徒同士のやり取りは限定され相互不信につながる。以上の結果は,生徒の日常的な不満や疎外感が学校内外の要因によって重層的に構成されており,ここに出身階層が大きく関与していることを示している。

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© 2012 日本教育社会学会
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