2012 年 91 巻 p. 29-49
現代日本の高校階層構造は,社会経済的背景と高校選択との関係を明確にしてきたといえる。このような実態を背景として,本稿ではなぜ高校選択の社会経済的格差が生成・維持されるのかについて,Richard Breen and John H. Goldthorpe(1997)の合理的行為理論に基づく相対的リスク回避仮説と吉川徹(2006)の学歴下降回避仮説に注目した。そして,2002年に行われた高校生とその母親に対する社会調査データ(N=545)を用いて,その妥当性を検証した。分析の結果,経済的資源や中学3年時の成績をコントロールしても,親の職業や学歴は高校ランクに対して直接影響を与えていること,また,中学3年時の成績が高校ランクに対して与える影響は,親の職業や学歴によって異なることが明らかになった。加えて,高校タイプ別の職業達成・教育達成の見込みから予測されるパターンにしたがって,親の職業や学歴が高校タイプの選択に影響を与えていることが示された。以上の分析結果から,高校選択の社会経済的格差を説明する上での,相対的リスク回避仮説と学歴下降回避仮説の妥当性が示された。