教育社会学研究
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論稿
学校における児童の新たな行動様式はどのように成立するか
―教師の意図から外れた場面の談話分析―
岡本 恵太
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2015 年 97 巻 p. 67-86

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抄録

 学校には,ほかの場所では見られない特殊なふるまい方が存在する。児童は,こうした行動様式を身につけて学校という場に適応していく。このプロセスを学校的社会化と呼ぶ。
 本研究の目的は,児童および教師にとって新しい行動様式が成立する過程を明らかにすることである。そのために,教師の意図から外れた授業場面に焦点をあてた。事例として取り上げたのは,小学校一年生のひらがな学習である。教師の提示したひらがなの「まちがい」を指摘しようとした場面について,児童と教師の談話および行動を分析した。
 分析の結果,一連の児童の行動に規則性が見られた。すなわち,発表する児童の近くで一名の児童が待機し,交代するというパターンである。さらに,児童の話し方には,教師の模倣が見られた。それに呼応するように,教師もまた「無力さ」を演じていた。つまり,児童と教師の「共演」が成立していたのである。
 事例に見られたパターンの生成と演技との関連について,ヴィゴツキーの理論を参照して考察した。ヴィゴツキーによれば児童の「ごっこ遊び」は自己決定のルールを含んでいる。本事例において,児童は模倣をすることにより,教師の行動の論理を取り入れていたのである。以上のことから,新しい行動様式の獲得のためには,児童の演技を引き受ける教師の即興的対応が重要であること示唆された。

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© 2015 日本教育社会学会
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