教育社会学研究
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特集
批判的教育学から見たグローバル化をめぐるカリキュラム・教育方法のポリティクス
―後期近代におけるマイノリティ教育の論理―
澤田 稔
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2016 年 98 巻 p. 29-50

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抄録

 本稿の目的は,グローバル化に伴う知識・能力(観)の再編が各国で加速する現状にあって,この動向がマイノリティ集団にとってどのような意味を持つのかという問いに対する一定の答えを,アメリカ合衆国で批判的教育学と呼ばれる分野の研究成果を踏まえるとともに,初等中等教育のカリキュラム・教育方法に関する実践事例を参照することによって明らかにすることである。考察には以下のような手順をとる。まず,本考察の理論的基盤となる批判的教育学の特質と,本稿が採用する視座の位置付けを明らかにするために,アメリカにおけるカリキュラム論と批判的教育学との関係を整理して,批判的教育学内部における重要な論争点を取り上げ,その意義について考える。その上で,近年の批判的教育学でも言及されることが多いフレイザーによる「再配分の政治」と「承認の政治」という正義論の概念を導入し,これを再解釈して教育実践論に適用することで,グローバル化による知識・能力の再編に対応するとともに,不平等の拡大再生産の是正に資するカリキュラム・教育方法論の可能性について論じる。さらに,このような社会適応・地位達成の実現を目指す教育だけでなく,民主主義社会における,より積極的で活動的な主体性の涵養を目指す批判的市民性教育の可能性についても論究する。最後に,こうした可能性を実践的に具現化したとみなすことができる事例を取り上げる。

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© 2016 日本教育社会学会
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