英米文化
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On the Rise and Fall of the Dynasty in Absalom, Absalom! and Gone with the Wind
Yoshio Yokoyama
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1991 年 21 巻 p. 27-35

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抄録

マーガレット・ミッチェルの『風と共に去りぬ』とウィリアム・フォークナーの『アブサロム,アブサロム!』は,ともに歴史小説で,1936年に深南部で書かれた。両小説に共通するものとしてdynastyの興亡があげられる。『風と共に去りぬ』のジェラルド・オハラと『アブサロム,アブサロム!』のトマス・サトペンは,ともに貧乏白人で,自分のdynastyを建設するとき,動機は異なるが共通の野望を持ち,土地,奴隷,育ちのよい妻を持つことを望み,強い意志,実行力,勇気,抜け目なさ,独立心を持って行動する。ジェラルドのdynastyは,南北戦争によって崩壊するが,サトペンのdynastyは,南北戦争に加えて人種問題(黒白雑婚)によって崩壊する。サトペンの場合,息子のヘンリーが混血のチャールズ・ボンが妹と結婚するのを防ぐために彼を殺し,サトペン農園をさる。後継者がいなくなったことでdynastyは完全に崩壊する。一方,ジェラルドの場合は,dynastyは崩壊するが,娘スカーレットがアトランタで製材業を営み,タラ農園の経済を支え,後継者としてdynastyを再建する可能性を残す。このことは『風と共に去りぬ』では,「戦争中と戦争後をいかに生き抜くか」をテーマとしているのに対して,『アブサロム,アブサロム!』では,人種問題をテーマとしていることによるのである。

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© 1991 The Society of English Studies
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