環境情報科学
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研究論文
中国水稲研究所データベースを用いた黄河上流灌漑域におけるイネ品種の開発傾向
原 裕太
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2022 年 51 巻 4 号 p. 83-89

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抄録

本研究では中国水稲研究所データベースの登録情報に対する分析を通じて,黄河上流の一大灌漑稲作地域・寧夏回族自治区におけるイネ品種開発の傾向を明らかにした。その結果,品種のタイプとルーツの傾向等が把握できた。とくに1979 年から2020 年にかけて,低アミロース化,高株高化,多産化,生育期間の長期化,必要な施肥量の増加が進んでおり,生育期間の長期化は中国全土の目標とは一致しなかった。低アミロース化は主要消費者である寧夏や黄土高原の人々の嗜好を表象する可能性,温暖化の影響等が考えられた。また黄河中上流域では断流や水質汚染が課題である一方,生育期間と必要な施肥量の傾向は必ずしも環境負荷を低減する方向には進んでおらず,気候変動適応の観点でも課題があると示唆された。

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© 2022 一般社団法人環境情報科学センター
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