環境情報科学
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最新号
「環境情報科学」54巻2号
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表紙
目次
特集:気候変動適応策
  • 「気候変動の緩和・適応」から「気候・生物圏の共生」へのパラダイム転換を
    安成 哲三
    2025 年54 巻2 号 p. 1-9
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル 認証あり
    現在の緩和策も適応策も,気候変動に対し,より強靭で未来可能な社会はどうあるべきかという論考ぬきに,それぞれに設定した目標だけを見てなされている。社会のあり方のより統合的な変革の実現は,生物圏を人類社会が大きく依拠してきた生存基盤であり気候と密接に相互作用する気候・生物圏共生系として扱い,その系と調和した地球社会,地域社会を創出できるかにかかっている。そのための具体策として,大都市とその周辺の農山漁村域をつなぐ地産地消型の地域流通圏を基本とした地域循環共生圏の形成と,それらのネクサス的連携の構造を発展させることが重要であろう。
  • 仲江川 敏之
    2025 年54 巻2 号 p. 10-17
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル 認証あり
    本稿では,世界と日本におけるこれまでに観測された気候変動と物理法則に基づいた気候モデルによる将来予測を概説する。近年,極端な高温が発生しており,イベント・アトリビューション(EA)手法により地球温暖化の寄与が科学的に示されている。また,気温上昇がある閾値(ティッピング・ポイント)を超えると,不可逆的な変化を引き起こすティッピング・エレメントの存在が明らかになり,緩和策の重要性が再認識されている。将来気候予測においては,人間社会・生態系へ影響を及ぼす気候影響駆動要因(CID)の予測が重視されてきている。日本や地域ごとの将来気候予測は「日本の気候変動2025」に詳細にまとめられおり,各種政策の判断材料として重要な情報源となる。
  • 長谷川 利拡
    2025 年54 巻2 号 p. 18-25
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル 認証あり
    2020 年に開始した環境研究総合推進費 S18 プロジェクトは,2025 年 3 月に終了した。本プロジェクトは,わが国の気候変動適応を支援する総合的な科学的情報の創出を目的としたもので,テーマ 2 では農林水産業を対象に影響予測と適応策の評価を行った。本稿ではその中から農作物に関する研究の一部を紹介する。5 年間で,水稲・大豆の高温障害予測モデルの開発や,高温耐性品種を活用した適応技術の効果の定量評価,さらに温帯性・亜熱帯性果樹の適地変化の予測など,従来にない影響評価と適応に関する知見が得られた。これにより,地域や温暖化レベルによって異なる気候変動の影響や適応技術の効果が定量化され,地域に応じた適応策の実践への貢献が期待される。
  • 中尾 勝洋
    2025 年54 巻2 号 p. 26-31
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル 認証あり
    気候変動は,森林生態系や林業にも影響を与えるため,適応策の重要性が増している。森林域を対象とした適応策の検討においては,森林が吸収源として緩和策へ寄与している点,環境緩和調整機能などの特性を活かした生態系を活用した適応策などの点について,多面的に評価する必要がある。森林域における適応策を Resist, Adapt,Transform の 3 つに区分し,それぞれの特徴を国内外の事例を紹介しながら概観した。さらに,適応策の実装化に向けた課題と可能性について,森林域の特徴を加味し,時間軸と空間軸に着目しながら考察した。
  • 川越 清樹
    2025 年54 巻2 号 p. 32-37
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル 認証あり
    気候変動の適応策として推進される流域治水の実践のため,あらゆるステークフォルダーも流域治水に対して共通認識を図るプロセス,および堤内で実践できる対策オプションを認知してもらうアプローチを踏まえて,オプションの系統化を図り,対策オプションのポテンシャル効果期待量を把握できる地図化した環境情報を開発した。本稿では,現状の数値地理情報で解読できる貯留のポテンシャル効果期待量を示す日本列島の空間レベルで地図化した結果を示した。今後,科学技術の進展によりデータ整備されれば,ステークフォルダー側からの流域と対策オプションの関係を俯瞰させる視点と思慮への効用が図れる環境情報の開発を進めることが見込まれる。
  • 大橋 唯太
    2025 年54 巻2 号 p. 38-43
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル 認証あり
    予想される将来の気候変動は,人間の健康に対して現在よりも悪い影響を及ぼす可能性が高い。日本では,極端な気候条件に脆弱な高齢者の人口増加が加わるため,個人と社会の両面からヘルスケアの問題に喫緊の対応が迫られている。本稿では健康分野のうち,暑熱・寒冷ストレスに起因する熱中症,循環器疾患,呼吸器疾患のアウトカムに絞り,著者の最新研究で得られた興味深い結果を中心に話題提供していく。特に,気候条件に気温,アウトカムには死亡数を用いた疫学分析と数値モデル・シミュレーションによるアプローチから,適応策の効果について考える。
  • 岡 和孝
    2025 年54 巻2 号 p. 44-49
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル 認証あり
    気候変動による影響は産業・経済活動にも多大な影響を及ぼす。このような影響に対し,事業者が産業・経済活動を継続していくためには,適応策への取組が必要であり,近年その取組も進みつつある。本稿ではこのような事業者の産業・経済活動における適応策に係る動向として,事業者の適応策への取組と関連する枠組み,適応促進のための国立環境研究所の取組,そして産官学連携による取組などを紹介する。
  • 加藤 博和, 村山 顕人, 竹林 英樹, 徐 非凡
    2025 年54 巻2 号 p. 50-56
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル 認証あり
    都市域は多くの人々が活動する場であるため気候変動の影響は大きく,適応策は非常に多岐に渡る。本稿では,日本における都市域での気候変動適応策を概括した。まず都市計画の観点からの適応策のあり方について説明し,著者らによる研究事例を紹介した。次に,暑熱対策に着目し,神戸市における適応策の研究およびその社会実装の事例を紹介した。また,交通・輸送システムに着目し,災害時の脆弱性評価やリスク評価の観点から著者らによるこれまでの研究事例を紹介した。
  • 適応策の実践に向けて
    秋山 奈々子
    2025 年54 巻2 号 p. 57-62
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル 認証あり
    気候危機と言われる時代,気象災害の頻発や農産物の不作,熱中症の増加など,身近な生活においても気候変動の影響が顕在化し,温室効果ガスの排出削減を行ない気候変動そのものを抑制する「緩和」だけでなく,現在および将来の気候変動影響を回避・軽減する「適応」が喫緊の課題となっている。気候変動適応法の施行から 6 年,法に基づく気候変動影響評価の実施や気候変動適応計画の策定,地方公共団体や企業の取組支援,国際協力などを通じて,適応の取組基盤の整備等が進められてきた。気候変動影響が深刻化しているいま,基盤整備から気候変動適応策の実践が求められている。
  • 適応管理の法的検討
    下村 英嗣
    2025 年54 巻2 号 p. 63-66
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル 認証あり
    本稿は,気候変動適応策を行うにあたり有効かつ必要とされる適応管理(adaptivemanagement)について,法的観点から検討した。気候変動の影響により環境状態が激変することが予想される中で,環境法も従来のままでは機能不全に陥るおそれがあるため,柔軟性を備えなければならない。環境法の柔軟化の方法として適応管理の導入が提唱されるが,その導入にあたっては,行政の裁量または権限の拡大と民主的統制の関係,柔軟性と法的安定性の関係など課題もある。以下では,気候変動時代の環境法の限界,適応管理の概要,適応管理導入による法的課題について述べる。
  • KEM/KLAR ! からこおりやま広域圏へ
    戸川 卓哉, 辻 岳史, 高橋 敬子
    2025 年54 巻2 号 p. 67-73
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル 認証あり
    人口減少と少子高齢化が進行する日本の基礎自治体において,気候変動への適応策および緩和策を地域主導で推進していくことが求められている。本稿では,この困難な課題に対処するための手段として,「広域連携」の可能性を検討する。具体的には,こおりやま広域圏市町村の環境部門の担当者で構成される研究会において,オーストリアにおける広域連携制度の取り組みを現地担当者から紹介を受け,その制度の日本への適用可能性について議論を行った。その結果,日本の自治体が直面する課題が明らかになるとともに,複数地域において環境政策を支援する「地域マネージャー」の有効性が共有され,国内への制度適用の可能性も示唆された。
  • 浜田 崇
    2025 年54 巻2 号 p. 74-80
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル 認証あり
    気候変動適応法に基づく地域気候変動適応センター(以下,地域適応センター)の設置が全国で進み,その活動内容は設置母体により特色づけられる。長野県では,県庁と研究所が共同で地域適応センターを設置し,地域の気候変動の実態把握,独自のモニタリング調査,学生との共同調査など,地域ニーズに応じた活動を展開している。また,気象データ可視化ツールの開発や WebGIS による将来予測情報の提供は,市町村の適応計画策定支援に貢献している。一方,地域適応センターには専門知識の不足に伴う活動上の課題もある。国立環境研究所気候変動適応センターの支援や地域間の連携が,この課題解決と活動の質の向上につながっている。
  • 下村 英嗣, 岡 和孝, 平野 勇二郎
    2025 年54 巻2 号 p. 81-83
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル フリー
連載 環境政策の最前線
  • 塚原 沙智子
    2025 年54 巻2 号 p. 84-92
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル フリー
    2024年8月,「第五次循環基本計画」が閣議決定され,「循環経済への移行」が国家戦略に掲げられた。しかし,再生材の供給など動静脈連携による取組は緒に就いたばかりである。一方,欧州において,自動車における再生プラスチック利用義務化が盛り込まれたELV規則案が提案されており,日本の製造業への影響も必至と見られる。環境省では,経済産業省と連携し,「自動車向け再生プラスチック市場構築のための産官学コンソーシアム」を立ち上げ,2025年3月,「自動車向け再生プラスチック市場構築アクションプラン」を取りまとめた。2025年度以降は,再生材供給のサプライチェーン上のさまざまな課題を一つ一つ解決するため,産官学連携による取組は進化していく。
研究論文
報告
  • 田崎 智宏, 中島 謙一, 横畠 徳太, 石濱 史子, 林 岳彦, 高村 ゆかり, 谷口 真人, 白井 信雄, 勢一 智子, 中静 透, 伊 ...
    2025 年54 巻2 号 p. 99-109
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル フリー
    地球規模で環境問題が深刻化するなか,気候変動対策や生物多様性対策,資源循環対策を統合的に実施していくニーズが生じている。本稿では,複合環境問題に直面する企業担当者らと意見交換することを通じて得られた知見をもとに,統合的なアプローチには定性的構造把握,定量的評価,対応策実施という3つの柱があること,統合的対応を困難にさせる要因には少なくとも10の要因があることを示した。さらに,企業等には統合的に対応するリソースには限界があることから,段階的に取り組みを進めていくべきとし,「対応への認知とコミュニケーション」「マネジメント」の2つに分けて対応策の方向性を示した。
2024年度一般公開シンポジウム開催報告
2024年環境情報科学研究発表大会 企画セッション報告
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