環境情報科学
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最新号
「環境情報科学」53巻4号
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表紙
目次
特集:グリーンウォッシュを考える
  • 足立 直樹
    2024 年 53 巻 4 号 p. 1-4
    発行日: 2024/12/31
    公開日: 2025/04/15
    ジャーナル 認証あり
    グリーンウォッシュとは,企業が実際の行動より優れているように誤認させる環境主張を行うことである。近年,気候危機など深刻化する環境問題への対応が企業の競争条件となり,これを装う行為は批判や規制の対象となってきた。グリーンウォッシュは消費者や投資家を欺くというだけでなく,環境問題への対応を遅らせ,取り返しのつかない事態を招く恐れすらある。そのため,欧州を中心に規制が強化され,国連も厳密な基準を策定している。一方,日本では厳しい規制や批判は少ないが,企業がグローバル市場で競争力を維持するには,厳密なエビデンスに基づく正確な環境コミュニケーションが必要である。
  • 小畑 徳彦
    2024 年 53 巻 4 号 p. 5-9
    発行日: 2024/12/31
    公開日: 2025/04/15
    ジャーナル 認証あり
    人々の環境への意識が高まり,環境に対する影響を考えて商品を選択する人が増え,事業者も環境に配慮した商品を開発し環境に配慮したものであることを表示するようになっている。そのような中,環境に対する実際の効果を超えた表示を行って景品表示法違反とされる事件も起きている。本稿は,そのような事件として,コピー用紙の古紙の配合率を実際より著しく多く表示した事件,冷蔵庫の断熱材にリサイクル材を使用している旨表示したが実際には一部しか使用していなかった事件,エコマークの不正使用事件並びに釣り用疑似餌,エアガン用BB弾,ごみ袋等およびカトラリー等の生分解性について合理的な根拠のない表示を行った事件を紹介する。
  • 小島 寛司
    2024 年 53 巻 4 号 p. 10-15
    発行日: 2024/12/31
    公開日: 2025/04/15
    ジャーナル 認証あり
    にわかに注目を集めるグリーンウォッシュの背景には,営利企業の本質がある。グリーンウォッシュによる弊害に対する危機感から,欧米では規制が強化され,これに対抗する法的アクションも増加している。他方で,日本国内においては景表法が存在するものの,規制範囲は狭く,不十分な面がある。ソフトローである環境表示ガイドラインは,内容自体は欧米の規制の内容と比べても見劣りしない。同ガイドラインの価値を見直し,規制力を有するものへ高めていくことが重要である。また,市民がグリーンウォッシュの問題点を適切に認識し,監視の目を持つことも重要である。
  • ハイネケン ハナ, 奥山 杏子
    2024 年 53 巻 4 号 p. 16-22
    発行日: 2024/12/31
    公開日: 2025/04/15
    ジャーナル 認証あり
    気候変動の影響に対する意識の高まりにより,投資家にとって莫大なグリーン市場の機会が生まれているが,それに並行して,市場におけるグリーンウォッシュのリスクが高まっている。本稿では,金融機関がグリーンウォッシュのリスクを回避するために,ネットゼロ誓約を裏づける科学的知見に基づいてなすべきことを記す。世界有数のトランジション・ファイナンスを推し進める日本では,グリーンウォッシュに加えてトランジションウォッシュのリスクを特に考慮する必要があり,その概要も説明している。
  • 下村 委津子
    2024 年 53 巻 4 号 p. 23-28
    発行日: 2024/12/31
    公開日: 2025/04/15
    ジャーナル 認証あり
    この数年で企業の情報開示の対象は投資家へと大きく傾き,投資家の関心を高め自社の取り組みをアピールする企業のサステナビリティ情報が主流となってきている。しかし,このような動きの大半が投資家のニーズに対応しようとするものであり,消費者・生活者に向けてのわかりやすく正確な情報としての質とは異なる。本稿では,諸外国のグリーンウォッシュ規制の動向の考察等を通じ,企業による全社的な取り組みや,社会的な仕組みづくり,ステークホルダー参画のもと世界基準に照らし合わせたグリーンウォッシュ・ガイドラインの整備が必要であることを示した。
  • 東 健太郎
    2024 年 53 巻 4 号 p. 29-33
    発行日: 2024/12/31
    公開日: 2025/04/15
    ジャーナル 認証あり
    本稿は,Montgomery et al. (2024) が提唱したグリーンウォッシュ研究の3段階モデルを基礎に,国際ジャーナルにおける議論の展開を概観し,日本における課題と展望を提示する。基本モデルは企業による消費者への一方向的な情報提供を,拡張モデルは多様なステークホルダー間の双方向的な関係性を問題にする。また,新興モデルはESG投資やネットゼロ(カーボンニュートラル)を中心とした未来志向の議論である。日本では2020年代以降,グリーンウォッシュに対する関心が急速に高まる一方で,初期段階である基本モデルおよび拡張モデルに対応する議論の蓄積が限定的である点が課題である。本稿は,日本でのグリーンウォッシュに関する継続的な議論の必要性を主張する。
  • 根本 直子
    2024 年 53 巻 4 号 p. 34-40
    発行日: 2024/12/31
    公開日: 2025/04/15
    ジャーナル 認証あり
    ESG投資は,日本経済の長期的な成長を支える可能性を秘めている一方,まだ発展途上にあり,情報の量や質,またそれを解析する投資家のノウハウは十分ではない。また海外の市場では,企業による実態の伴わない宣伝(いわゆるESGウォッシュ)が大きな社会問題となっており,日本においてもESG投資の発展を制約するリスクがある。本稿では,ESG投資の最近の動向を概観したうえで,ESGへの取り組みが企業価値の向上に結びついているかどうかについて,主な実証研究を紹介する。またESGウォッシュが生じる理由と,企業価値への影響について考察した後,望ましい開示のあり方を提示する。
  • 牛尾 奈緒美
    2024 年 53 巻 4 号 p. 41-47
    発行日: 2024/12/31
    公開日: 2025/04/15
    ジャーナル 認証あり
    ジェンダー平等やダイバーシティに関する具体的な成果を示さないまま,SDGsへのコミットメントを強調する「SDGsウォッシュ」。本稿では,SDGsの目標5(ジェンダー平等)やESG経営を重視する企業の取り組みのうち,本質的な変革を伴わない見せかけの対応を問題視し,発生原因の分析や課題解決に向けての提言を行う。論点は①既存研究におけるジェンダー・ダイバーシティ推進のもたらす価値の検証,②今日の経営環境からウォッシュが生まれる原因の究明,③外面的成果を求める企業行動の抑制策である。人材多様性による効果の顕在化には,ダイバーシティ推進の本来の価値共有が不可欠であり,地に足の着いた変革の積み重ねと組織文化の醸成が重要である。
  • 島谷 幸宏
    2024 年 53 巻 4 号 p. 48-51
    発行日: 2024/12/31
    公開日: 2025/04/15
    ジャーナル 認証あり
    近年,水に関するグリーンインフラが徐々に全国的に普及するようになってきており,大変,喜ばしいことである。一方で,グリーンウォッシュとよばれる,グリーンインフラに一見なっているようであるが,グリーンインフラの本来の目的である,生物多様性の保全や生態系の機能を活かすということから離れた,あるいは環境負荷(例えばCO2排出量)が大きいグリーンインフラが多くつくられるのではないかという懸念がある。
  • 伊坪 徳宏
    2024 年 53 巻 4 号 p. 52-57
    発行日: 2024/12/31
    公開日: 2025/04/15
    ジャーナル 認証あり
    製品やサービスのライフサイクルに注目した定量的環境影響評価の方法であるLCA(ライフサイクルアセスメント)は,国際規格ISO14040の発行以来,数多くの研究が行われており,データベースやソフトウェアの開発やSCOPE3などのガイドラインの発行等を通して,産業界で急速に活用が広がっている。現在はグリーンウォッシュによる消費者への悪影響を回避するための方法として注目されており,欧州委員会はグリーン主張指令において実質的にLCAの情報開示を要求する。本稿では,LCAに加えて,製品間の比較を可能にする環境ラベルタイプIIIと欧州環境フットプリントについて解説し,グリーンウォッシュへの対策方法としての長所と課題について解説する。
  • 浜島 直子, 藤稿 亜矢子, 石井 雅章
    2024 年 53 巻 4 号 p. 58-59
    発行日: 2024/12/31
    公開日: 2025/04/15
    ジャーナル フリー
連載 環境政策の最前線
  • 山田 浩司
    2024 年 53 巻 4 号 p. 60-65
    発行日: 2024/12/31
    公開日: 2025/04/15
    ジャーナル フリー
    循環型社会の形成に向け,廃棄物の適正処理と資源循環の促進が進められてきた。近年,資源循環は,環境負荷低減に加え,脱炭素社会の実現にも重要であり,「第五次循環型社会形成推進基本計画」においても,線形経済から循環経済への移行を進めることが国家戦略として定められた。また,資源循環は大きな経済効果を生む分野として期待されているとともに,金属やエネルギー資源の多くを輸入に依存しているわが国において,資源を国内で循環させることが経済安全保障にも貢献するものである。そういった背景を踏まえ,本稿では,令和6年に成立した再資源化事業等高度化法について解説する。
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