環境情報科学
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表紙
目次
特集:土地問題を考える
  • 国土交通省不動産・建設経済局土地政策課
    2023 年 52 巻 4 号 p. 1-7
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル 認証あり
    近年増加が顕著な空き地等は管理不全状態となって周囲に悪影響を及ぼし,所有者不明土地は公共的事業等の有効な利用の機会を阻害する。土地の適切な利用・管理を確保するため,人口減少社会に対応した土地制度を確立していくことは喫緊の課題である。本稿では,順次整備・改正が進められてきた所有者不明土地法制や,土地に関する基本理念,施策等を定める土地基本法の概略のほか,国土計画と土地政策の関わり,今後の土地政策の展開の方向性等を紹介する。
  • 松尾 弘
    2023 年 52 巻 4 号 p. 8-15
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル 認証あり
    明治初年の土地法改革によって導入された日本の私的土地所有権制度は,さまざまな土地問題に直面することを通じて発展してきた。その制度変化の方向性は,土地所有制度に関する主体,客体および時間の座標軸の拡張によってとらえることができる。今や土地所有制度は,土地所有者と国・地方公共団体・地域コミュニティ・NGO/NPO・民間事業者等との連携を深め,対象地とその周辺環境との関係および都市と地方とのバランスを視野に入れた国土管理の機能を強め,長期的視野に基づく戦略的な計画と整合するものへと進化しつつある。それは,私的所有権制度をより効率的で持続可能なものにするとともに,土地所有権論の新たな展開を促すものと考えられる。
  • 阿部 剛志
    2023 年 52 巻 4 号 p. 16-23
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル 認証あり
    わが国の土地問題のうち「所有者不明土地問題」に対しては過去 10 年程の間に問題解決に向けた各種法制度が相次いで講じられ,2023 年 4 月には民法に基づく「所有者不明土地管理制度」が施行された。この数ヵ月の同制度の適用状況をみると,過去の類似制度と比較して急速な広がりが確認でき,長年の懸案であった所有者不明土地問題の解決に向けた大きな寄与が期待される。本稿では所有者不明土地問題に係る主な法制度を概観したうえで,所有者不明土地管理制度とその比較対照としての地域福利増進事業に着目し,その制度運用面の特性と課題に触れる。そのうえで,所有者不明土地問題の解決を,各地域での適正な土地利用・管理につなげていくための視座を提起する。
  • 野澤 千絵
    2023 年 52 巻 4 号 p. 24-29
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル 認証あり
    近年,廃墟ホテル,廃墟化した大仏,廃墟マンション…など土地・建物の「終末期」に関わる問題が相次いでいる。本稿は,すでに全国各地で見えてきた実態・課題を踏まえ,土地の取得・開発「後」に着目した維持管理・終末期問題への対応策の構築に向けて,どのような点を議論していくべきかを論じたものである。土地所有,土地利用,維持管理,利用停止後の維持管理,解体までの各フェーズにおける法整備状況を整理した上で,①大規模建物の終末期に向けて,維持管理費や解体費を個々の所有者等によって事前に確保しておくための仕組みづくり,②利活用が困難な土地の新たな利用方法を生み出せるための支援策の構築が特に必要であることを示唆した。
  • 中川 雅之
    2023 年 52 巻 4 号 p. 30-35
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル 認証あり
    2018 年の世帯土地統計(国土交通省)によれば,世帯の保有する原野等を含む空地の面積は 2008 年に 632km2 であったものが,2018 年には空き地が 589km2 ,原野等が775km2 となり,合計 1364km2 とほぼ倍増している。空地はその発生メカニズムにより,構造的空地、摩擦的空地,留保的空地に分類することができる。このうち,摩擦的空地,留保的空地の発生理由は合理的な判断が背後に存在するため,少なくともその開発・利用を無理に促す政策は支持されない。しかし,地域の生産性が低下している状況下では,これらの空地に適切な管理が施されない場合発生する外部不経済を原因として,地域全体が衰退する可能性がある。これを回避する政策が慎重に設計される必要がある。
  • 安藤 光義
    2023 年 52 巻 4 号 p. 36-41
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル 認証あり
    農業収益の悪化を背景とする農地の受け手の減少が荒廃農地発生の基本的な要因であり,今後も増加が予想される。不在地主や所有者不明農地の存在は権利関係を複雑にして農地利用調整コストを押し上げ,問題の解決を難しくしている。また,農地の「負動産」化に伴い,環境・国土保全にマイナスの影響を与えかねない転用も進んでいる。これに対し,荒廃農地の発生状況を把握して農地再生を進める仕組みや農地を相続した者の農業委員会への届け出の義務化,所有者不明農地の農地中間管理機構を通じた貸付制度などの対策が講じられてきた。だが,こうした制度が実効性を発揮するための鍵は農地の受け手の存在にあり、その見通しは明るくない。
  • 中山間地域から都市近郊地域にかけて
    齋藤 雪彦
    2023 年 52 巻 4 号 p. 42-48
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル 認証あり
    中山間地域では,荒廃という現状をある程度受容しつつ,空間を管理する仕組みの維持を再考し,同心円的縮退や荒廃空間の周辺への波及など空間的特質,経済的合理性を超えた担い手の管理意志を踏まえた,農村撤退論に抗する文化的景観としての位置づけが必要である。都市近郊地域では,近隣市街地の都市的需要の染み出しが空間変容(産廃置き場・事業所・資材置き場)を引き起こすが,農村部の建設業化,貧困問題,反社会勢力の介入などの社会構造的要因と法制度・条例とその運用の限界性が指摘できる。関係人口や移住者等を含めた地域外人材を活用した,新たな価値観を伴うコミュニティ再形成,地域資源の活用による地域再生が求められる。
  • 飯國 芳明, 山本 幸生
    2023 年 52 巻 4 号 p. 49-54
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル 認証あり
    中山間地域では,1990 年代から所有はするものの,その利用・管理をしない状態,すなわち,所有権の空洞化が顕在化するようになった。その後の中山間地域を牽引してきた昭和一桁世代の人口が高齢化により減少し始めると,土地所有権の多くは域外に流出し,これらの土地は利用したくても利用できない土地へと変容しつつある。高知県大豊町での集落調査によれば,相続未登記の筆数と土地面積の比率は,町の平均的な集落である A 集落では 40.1%と 43.3%,限界集落に区分される B 集落では 69.0%と62.5%に及んでいた。近年になって,この対策として制度改正が相次いでいる。しかし,問題の根本的な解決は容易ではなく,移住者の比率の高まりにより土地所有権の空洞化問題は新たな局面を迎えている。
  • 林地台帳制度と森林経営管理 制度創設の背景・成果・課題
    笹田 敬太郎
    2023 年 52 巻 4 号 p. 55-61
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル 認証あり
    日本の国土の約 2/3 を占める森林,林地は,さまざまな機能を有しているものの,所有者や境界の不明,管理不足など数多くの問題を抱えている。本稿では,土地問題における林地の特徴と課題を整理するとともに,森林所有者不明問題に関わる近年の施策の背景,成果について説明し,残された課題を提示する。林地台帳制度,森林経営管理制度,森林環境譲与税の創設は,森林情報や森林所有者情報を整備するきっかけや基盤を作った点は評価できるものの,市町村森林行政の人員不足に伴う情報管理・更新の課題や所有者探索の停滞などの課題が残っている。市町村森林行政の体制を補完し,所有者不明森林への対応の実効性を高めるためにも,方針の再確認,優先順位づけを行うとともに,専門技術やノウハウをもつ外部主体との連携および役割分担が重要であることを提起した。
  • 小浦 久子
    2023 年 52 巻 4 号 p. 62-67
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル 認証あり
    地形風土,歴史・文化,生活と経済活動が調和した土地利用が良好な景観を生む。景観は地域に固有であり,地域ごとに景観計画の運用がある。初期の景観計画では運用目的を明確にし,土地利用と連動させる多様な試みがあったが,自治体に多くの判断が委ねられ,実際にはうまく機能しない計画も見られた。縮退期の経済活動やライフスタイルの変化に伴う土地利用の変容に対して,景観計画を総合的に地域のあり方を構想し空間指標を示す計画とし,届出制を活用することで,規制制度というよりも,景観として現れる地域の変化を調整する仕組みととらえるところに,景観計画による土地利用管理の可能性がある。
  • 福田 昌代, 三栗野 鈴菜
    2023 年 52 巻 4 号 p. 68-73
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル 認証あり
    人口減少等に伴い空き家・空き地は増加しており,今後世帯数が減少すればさらに空き地の発生が予想される。本稿では,「空き地」発生の前提として「空き家」を扱い,全国で最も特定空家等における代執行の実施件数が多い千葉県香取市を対象に,代執行による建物除却等の実施と除却跡地の土地利用の実態を明らかにした。これを踏まえ,今後の空き家・空き地対策として,危険な空き家の適切な判定手法や除却跡地の利活用可能性を含めた空き家対策,地域の目標像を踏まえた空き地利用の必要性について考察した。
  • 千葉県柏市 「カシニワ制度」を事例に
    鈴木 亮平
    2023 年 52 巻 4 号 p. 74-79
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル 認証あり
    千葉県柏市の「カシニワ制度」では,土地の管理に困っている所有者と,みどりの活動をしたい市民団体とをマッチングすることで,空き地(里山・農地を含む)が多様な取り組みの舞台となっている。花や野菜の栽培といった園芸活動だけでなく,子どもの遊び場や食育農園,防災広場にマルシェ会場等,さまざまな活動が生まれ,地域に彩りをもたらしている。空き地を地域に開き,時間的・空間的にシェアしていくことで,その土地の管理負担・コストもシェアされている。また,カシニワの考え方を活かし,安全な歩行空間や災害時の避難路確保等,地域課題の面的な解決を目指す取り組みも生まれている。
  • 荒金 恵太, 高山 範理, 石井 雅章, 横田 樹広
    2023 年 52 巻 4 号 p. 80-87
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー
連載 環境政策の最前線
研究論文
  • 新潟県上越市安塚地区を対象として
    水野 眞子, 島田 佑太朗, 時松 宏治
    2023 年 52 巻 4 号 p. 95-103
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー
    新潟県上越市安塚地区への導入を想定した浸水式雪冷房システムの省エネ性能とCO2排出量を評価した。導入施設は標準的な事務所ビル(延床面積4,133m2)とした。その結果,雪冷房システムは一般的な冷房システムより 10-28%の省エネ性能を示し,省エネ性能と積雪量は概ね比例した。CO2排出量では雪冷房設備の運用段階が98%を占め,この省エネ性能により過去21年間の降雪量に鑑みると延床面積辺り17.4kg-CO2/m2を比較対象より低減した。この比例関係と運用段階のエネルギー量で比較すると,当該地区5棟分の個別建物への雪冷房システムに必要な冷熱量は,除雪堆積場2個分に相当した。
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