2020 年 78 巻 4 号 p. 171-178
【目的】栄養成分表示の正しい活用を目指し,数値計算が必要な栄養成分表示の読み取り問題を用い,表示理解も含めて栄養成分表示の活用状況を分類し,その特徴を検討する。
【方法】2014年2月に消費者庁が実施した「栄養成分表示に関する消費者庁読み取り等調査」に回答した20歳以上の男女6,000人のデータを用いた。栄養成分表示の参考状況等の回答に不備がなかった者4,623人を解析対象者とし,活用状況を3群(「参考・理解群」「参考・非理解群」「非参考群」)に分類した。3群の属性をχ2 検定,食物選択動機を多項ロジスティック回帰分析(属性で調整)により比較した。
【結果】「参考・理解群」は1,889人(40.9%),「参考・非理解群」は1,105人(23.9%),「非参考群」は1,629人(35.2%)であった。表示を参考にしているが,正しく読み取れなかった「参考・非理解群」には,女性,60歳以上,低学歴の者が多く,食物選択動機では「参考・理解群」と比べて,低カロリー(オッズ比(95%信頼区間):1.33(1.14~1.56))を重視し,おいしさ(0.47(0.32~0.68))を重視していなかった。
【結論】数的思考力が高い日本でも,栄養成分表示の読み取りは課題であった。今後,栄養成分表示の理解度の詳細を把握すると共に,表示を読み取るスキルの向上やおいしさ等,食の全体的な価値への関心を高める教育が必要であると示唆された。