【目的】トランス脂肪酸の摂取は健康への悪影響が懸念されており,可能な限り低減することが推奨されている。本研究では,トランス脂肪酸量の少ない植物油脂及びマーガリン類を選択するための指標を明らかにすることを目的とし,機械学習の手法を用いて脂肪酸組成等との関連を解析した。
【方法】植物油脂32サンプル及びマーガリン類28サンプルを対象に,ガスクロマトグラフィーによりトランス脂肪酸量及び脂肪酸組成を測定した。トランス脂肪酸量を予測・判別するために植物油脂については脂肪酸組成を,マーガリン類については脂肪酸組成および脂質量を,説明変数としてリッジ回帰及び決定木を用いて解析を行った。
【結果】植物油脂中の平均トランス脂肪酸量は 0.41 g/100 g,マーガリン類では 0.43 g/100 gであった。リッジ回帰の結果,トランス脂肪酸を予測するモデルが植物油脂及びマーガリン類で構築され,実測値と予測値の間には有意な相関が認められた。決定木解析の結果,植物油脂では二価不飽和脂肪酸の割合が13%未満において,マーガリン類では三価不飽和脂肪酸の割合が4.1%未満において,トランス脂肪酸量が少ない製品であると判別された。
【結論】本研究の結果から,二価不飽和脂肪酸の割合が少ない植物油脂,三価不飽和脂肪酸の割合が少ないマーガリン類は,トランス脂肪酸量が少ない傾向にあることが示唆された。
【目的】離島住民を対象に,個別データの連結が可能な既存の健康・栄養調査データの活用により,野菜摂取量の変化に影響を及ぼす要因を食行動や食知識から検討することを目的とした。
【方法】島根県隠岐郡西ノ島町の,健康増進計画策定時(2014年)ならびに中間評価時(2021年)の健康・栄養調査データを用い,両調査ともに有効な回答の得られた20~70歳代の男女135名を解析対象とした。2時点における対象者の属性,野菜摂取量の比較には対応のある検定を用い,野菜摂取変化量(2021年から2014年の野菜摂取量を差し引いたもの)を従属変数,食行動,食知識,社会経済的要因,野菜栽培,定期健診に関する項目を独立変数とした重回帰分析を行い要因の分析を行った。
【結果】2時点の比較において,男性で野菜摂取量の有意な減少が認められた。重回帰分析によって,「家族構成」の同居から独居への変化が野菜摂取量の減少に有意に関連し,「主食・主菜・副菜をそろえた食事摂取頻度」の増加が野菜摂取量の増加に有意に関連することが認められた。
【結論】健康・栄養調査データを活用した縦断的研究により,個人の食行動,社会経済的要因が野菜摂取量の変化に影響を及ぼすことが示唆された。
【目的】子どもの頃の食事作りへの参加開始時期と成人後の食生活との関連を調べることにより,最適な食事作りへの参加開始時期を検討することを目的とした。
【方法】2019年に農林水産省が実施した「食育に関する意識調査」のデータを用い,全国20歳以上の男女1,721人を対象とした。現在の主食・主菜・副菜をそろえた食事頻度が「ほぼ毎日」「週に4~5日」「週に2~3日以下」の3群に分け,子どもの頃の食事作りへの参加開始時期(小学生,中学生,16歳から18歳)との関連を多項ロジスティック回帰分析により検討した。
【結果】主食・主菜・副菜をそろえた食事頻度が「ほぼ毎日」群は934人(56.4%),「週に4~5日」群は323人(19.5%),「週に2~3日以下」群は398人(24.0%)であった。属性等を調整すると,主食・主菜・副菜をそろえた食事頻度が「ほぼ毎日」「週に4~5日」であるオッズ比(95%信頼区間)は,子どもの頃の食事作りへの参加開始時期が「不参加」の者に比べて「小学生の頃」がそれぞれ1.81(1.37~2.39),1.72(1.23~2.39)であった。「中学生の頃」「16歳から18歳の頃」では関連はみられなかった。
【結論】成人後の望ましい食生活の実現を目指して子どもの食事作りへの参加を推進する場合,小学生の頃が最適であることが示唆された。
【目的】第7波期間中のCOVID-19の宿泊療養者に対する食事提供の実態を明らかにすることを目的とした。
【方法】47都道府県,87保健所設置市,23特別区の衛生主管部を対象に質問紙による全数調査を実施し,食事の調達から提供までの準備,提供された食事の内容,災害時対応の活用について調べた。
【結果】88自治体から回答を得た(回収率=56.1%)。宿泊療養を実施していたのは,回答したすべての都道府県と一部の政令指定都市の計34自治体であった。1日の食事の予算は「2,501円~3,000円」が30.3%と最も多く,食事は宿泊療養施設(56.3%)等から調達し,療養者の要望や体調等に応じて柔軟な対応を行っていた自治体もみられた。食事の内容に対して寄せられた意見は,「揚げ物が多く脂っこい」(88.5%),「味が濃い」(57.7%)などが多かった。食事提供に関わる災害時支援協定や災害用備蓄を利用した自治体は,それぞれ9.1%(n=2,n=3)と非常に少なかった。
【結論】食事に使われた金額や予算の使用方法は,自治体によってばらつきがみられた。提供された食事や自由に飲食できたものについて,自治体によっては療養者に合わせ柔軟に対応していたが,療養者から寄せられた意見をふまえると食事の内容や量が療養に不適切な場合があった。災害時の食事提供の枠組みはほとんど利用されていなかったことが明らかとなった。
【目的】血液透析患者の食事療法の一環として,主食をBran Grind(BG)無洗米にすることの有用性が示されている。BG無洗米は,洗米して用いる場合もあるが,洗米が成分値に与える影響は不明であるため,BG無洗米のリン・カリウム含有量に洗米が及ぼす影響を明らかにすることを目的に本研究を行った。
【方法】単一原料米とした2022,2023年産の高知県産コシヒカリのBG無洗米と精白米を試料とした。洗米・炊飯は日本食品標準成分表2020年版(八訂)に準拠し,精白米は3回または10回洗米し,BG無洗米は洗米せず,または3回洗米して炊飯した。以下,それぞれ,「精白米・洗米3」,「精白米・洗米10」,「BG無洗米・洗米0」,「BG無洗米・洗米3」とする。「こめ」および「めし」の乾式灰化後,リン含有量は,バナドモリブデン酸吸光光度法で,カリウム含有量については,原子吸光光度法により定量した。
【結果】「こめ」のリン・カリウム含有量は,精白米よりもBG無洗米が有意に低値であったが,「BG無洗米・洗米0」と「精白米・洗米3」では,有意な差はなかった。「BG無洗米・洗米3」のリン・カリウム含有量は,「BG無洗米・洗米0」より有意に低く,「精白米・洗米10」と同程度であった。
【結論】BG無洗米を3回洗米することでリン・カリウム含有量を減らせることが明らかとなった。
【目的】健康格差の縮小には食品の価格に加えて栄養価にも配慮した食環境づくりが重要である。本研究は栄養プロファイルモデルを用いて,低価格かつ栄養価の高い生鮮食品の可視化を目的として実施した。
【方法】食品の栄養素は日本食品標準成分表(八訂)から,推奨すべき栄養素はたんぱく質,食物繊維,ビタミンA,C,E,カルシウム,鉄,カリウム,マグネシウムの9つ,制限すべき栄養素は飽和脂肪酸,ナトリウム(食塩相当量)の2つとした。食品の価格は,小売物価統計調査2022年のデータを用いた。両データに含まれる食品のうち,生鮮食品62食品を対象とした。栄養価の評価にはNRF(Nutrient Rich Foods)モデルを参考にし,食品 100 kcalあたりの価格と栄養価の関連性を検討した。
【結果】食品群ごとの比較では,野菜・いも類が果実類,肉・魚介・卵類と比較して低価格で栄養価が高かった。野菜・いも類の中ではかぼちゃ,じゃがいも,キャベツなど,果実類ではオレンジ,みかん,柿など,肉・魚介・卵類ではいわし,あじなどが低価格で栄養価が高かった。
【結論】本研究では生鮮食品について,低価格かつ栄養価の高い食品の可視化ができた。定期的な食品価格の更新は必要であるが,食品選択時や栄養教育での活用が,経済格差に配慮した食環境整備の一助となると示唆された。
【目的】望ましい食生活の実現を目指し,健全な食生活の実践の心掛け(以下,心掛け)と食に関する主観的QOL(以下,SDQOL)の組合せと主食・主菜・副菜を揃えた食事の頻度,主観的健康感,体格を検討した。
【方法】東京都在住の20~64歳勤労者1,000人を対象とした調査データを用いた。心掛けとSDQOLの組合せにより対象者を4群(心掛け無・SDQOL低群,心掛け無・SDQOL高群,心掛け有・SDQOL低群,心掛け有・SDQOL高群)に分け,属性等をχ2 検定,主食・主菜・副菜を揃えた食事の頻度を二項ロジスティック回帰分析により比較した。さらに,主観的健康感,体格を従属変数とし多項ロジスティック回帰分析を行った。
【結果】心掛け有・SDQOL高群では,女性,同居,世帯年収600万円以上の者が多かった。また,心掛け有・SDQOL高群は,心掛け無・SDQOL低群と比べ主食・主菜・副菜を揃えた食事の頻度が毎日の者が多く[オッズ比(95%信頼区間):2.41(1.54~3.79)],主観的健康感が良く[7.83(4.42~13.9)],やせ[0.49(0.27~0.88)],肥満[0.45(0.27~0.76)]の者が少なかった。
【結論】健全な食生活を心掛けておりSDQOLも高い者は,主食・主菜・副菜を揃えた食事の頻度が高く,主観的健康感と体格も良好であることが示唆された。