栄養学雑誌
Online ISSN : 1883-7921
Print ISSN : 0021-5147
ISSN-L : 0021-5147
最新号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
巻頭言
総説
  • 田口 素子, 本 国子
    原稿種別: 総説
    2024 年 82 巻 1 号 p. 3-12
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/13
    ジャーナル フリー

     近年,スポーツ選手のエネルギー不足に関する研究が国際的に盛んに行われている。スポーツ栄養で使われる「エネルギー不足」とは,負のエナジーバランス状態を指しているわけではなく,エナジーアベイラビリティー(energy availability: EA)が低下した低EAの状態を指している。EAとは,エネルギー摂取量からトレーニングによって消費されるエネルギー量を差し引き,除脂肪量で除したものと定義されている。スポーツ選手が低EAの状態に曝されると,スポーツにおける相対的エネルギー不足(relative energy deficiency in sport: REDs)の国際コンセンサスに示されているさまざまな兆候や症状を引き起こすことが報告されている。慢性的な低EAにより,多くの生理機能が影響を受けることになる。例えば,甲状腺ホルモンや性ホルモンが低下し,コルチゾールが上昇するなど,内分泌の攪乱が起こる。そのため,エネルギー代謝が抑制されて安静時代謝量が低下する。女性選手では無月経を含む月経異常を引き起こし,男性でも性腺機能の低下など,性別を問わず生殖機能の低下を招く。骨形成の減少と骨吸収の増加によって骨密度が低下し,疲労骨折を引き起こしやすくなる。これらを早期発見し予防するためには,EAの代理マーカーの変化を含めて,栄養アセスメントの結果導かれた課題と関連する項目をモニタリングしていくことが極めて重要であり,スポーツ現場でのスポーツ栄養士/管理栄養士の役割は大きい。

原著
  • ─NIPPON DATA2010─
    中川 夕美, 由田 克士, 宮川 尚子, 岡見 雪子, 大久保 孝義, 岡村 智教, 三浦 克之, NIPPON DATA2010研究グルー ...
    原稿種別: 原著
    2024 年 82 巻 1 号 p. 13-23
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/13
    ジャーナル フリー

    【目的】スポット尿から推定した24時間尿中のナトリウム (Na)・カリウム (K) 排泄量と食事記録法により求められた栄養素等摂取量および食品群摂取量の関連を検討する。

    【方法】平成22年国民健康・栄養調査およびNIPPON DATA2010の参加者から,重篤な循環器疾患,腎臓病または腎機能低下と指摘された者および高血圧,糖尿病,脂質異常症の治療中の者を除いた男性581人,女性923人を対象とした。性別に推定24時間尿中のNaとKの排泄量の中央値で多/少を組み合わせた4群間 (尿中K多Na少群,尿中K多Na多群,尿中K少Na少群,尿中K少Na多群) で栄養素等摂取量と食品群別摂取量を比較した。

    【結果】尿中へのK排泄量が多くNa排泄量も多い群(尿中K多Na多群)は男女ともK摂取量が尿中K少群より多く,女性においてNaおよび漬け物の摂取量が尿中Na少群より多く,野菜類摂取量が尿中K少群より多かった。尿中K少Na少群は男女ともK摂取量が尿中K多群より少なかった。尿中K少Na多群は食事中Na/K比が女性で最も高かった。尿中K多Na少群は,食事中Na/K比が女性で最も低く,男女ともK摂取量,乳類の摂取量が尿中K少群より多かった。

    【結論】集団レベルにおいて,スポット尿から推定した24時間尿中のNaとKの排泄量は,NaやKの摂取状況,およびKの寄与率が高い食品群の摂取量と関連している可能性が示唆された。

研究ノート
  • 石長 孝二郎
    原稿種別: 研究ノート
    2024 年 82 巻 1 号 p. 24-34
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/13
    ジャーナル フリー

    【目的】レクリエーション時の室内へのにおい散布なし (無臭),におい散布あり (鰻蒲焼,白檀) により,食欲および達成感に影響を与えるかを把握するとともに,日常生活のレクリエーションの活動状況とその際の身体状況及び気分状態が食欲に影響を与えているかを探索することを目的とした。

    【方法】対象は女子大学生とした。用意した昼食を喫食させ,15時から問診とバイタルサイン測定,続いて今の食欲程度,食物を嗅いだ際の快・不快をビジュアルアナログスケール (VAS) で評価し,今の気分はPOMS2成人用短縮版で評価した。その後,レクリエーションを1時間実施し,活動後の達成感を評価した後に開始前と同じ項目を再調査した。

    【結果】室内へのにおい散布有無による食欲の程度に違いはなかった (におい散布なしVAS65.3±20.6点,鰻蒲焼VAS68.0±31.5点,白檀VAS72.8±19.7点,p=0.665)。しかし,食欲とバイタルサインとの関連では活動後に食欲の程度と体温に正の相関が認められた (rs=0.456,p=0.015)。また,食欲と気分との関連では活動後に食欲の程度と気分の“活気-活力”に正の相関が認められた (rs=0.375,p=0.049)。

    【結論】食欲に影響を及ぼす因子は,日常生活の中で“活気-活力”がわくことを見つけることと自分の適切な体温を維持することである。

  • 大道 あみ, 中村 萌香, 角谷 雄哉
    原稿種別: 研究ノート
    2024 年 82 巻 1 号 p. 35-43
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/13
    ジャーナル フリー
    電子付録

    【目的】女子中学生・高校生審美系スポーツ選手を対象に,食事の質スコアと適切な栄養素摂取状況との関連を検討すること。

    【方法】審美系スポーツクラブに所属する女子中学生・高校生133名に,簡易型自記式食事歴法質問票 (BDHQ) への回答を求めた。記入漏れ,過小・過大申告のあるものを除外し,最終解析対象者は104人であった。BDHQの結果から,修正版JFG (Japanese Food Guide Spinning Top) スコアおよびHEI-2015 (the Healthy Eating Index 2015) を算出し,各スコアの三分位値で対象者を3群に分けた。さらに,食事摂取基準の基準値を用いて栄養素摂取状況を評価し,各群間で比較した。

    【結果】推定平均必要量が策定されている14種類,および目標量が策定されている7種類の栄養素の内,基準値を満たさない,または範囲外である栄養素の数を,各スコアの3群間で比較した。両スコアとも,スコアが高い者ほど,推定平均必要量を満たさない,または目標量の範囲外である栄養素の数が有意に少ないことが示された。

    【結論】修正版JFGスコアおよびHEI-2015で高く評価される食事を摂取することで,適切な栄養素摂取につながることが示唆された。

資料
  • ─健康日本21 (第二次) の目標値との比較─
    苑 暁藝, 田島 諒子, 松本 麻衣, 藤原 綾, 岡田 恵美子, 瀧本 秀美
    原稿種別: 資料
    2024 年 82 巻 1 号 p. 44-57
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/13
    ジャーナル フリー

    【目的】Food-based dietary guideline (FBDG) を対象とし,野菜類の1日あたりの推奨摂取目標量ならびに野菜類の分類を健康日本21 (第二次) における野菜類の目標項目と比較することとした。

    【方法】諸外国 (30ヵ国) のFBDGから野菜類の推奨摂取目標量を抽出し,策定根拠の有無を確認し,野菜類の分類に一貫性が見られていない食品 (野菜ジュース,じゃがいも,じゃがいも以外のいも,豆類) および地域別に摂取習慣が異なる可能性が高い食品 (漬け物,きのこ類,藻類) を対象項目とし,野菜類の分類を整理した。

    【結果】日本と同じく,野菜類が独立した食品群として推奨された国は19ヵ国であり,推奨摂取目標量の範囲は 160~900 gに設定されていた。9ヵ国では野菜類と果物類を,2ヵ国では野菜類と豆類を合わせて推奨摂取目標量が設定されており,その範囲は 300~1,100 gと幅が広かった。また,日本を含めた19ヵ国のFBDGで野菜類の推奨摂取目標量の策定根拠が説明されていた。じゃがいもと豆類が野菜類に含まれるか否かについては,ほぼすべてのFBDGで明記されており,7割以上のFBDGで野菜類に分類されていなかった。野菜ジュースは12ヵ国で分類が不明であったが,日本を含め16ヵ国では野菜類に含まれていた。きのこ類については,分類が明記されていない11ヵ国を除き,日本以外のすべての国で野菜類に含まれていた。

    【結論】国や地域における食文化は異なるため,日本の野菜類の推奨摂取目標量との相互比較は困難であった。

  • 白石 楓人, 川名 雄太, 木村 宣哉
    原稿種別: 資料
    2024 年 82 巻 1 号 p. 58-64
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/13
    ジャーナル フリー
    電子付録

    【目的】北海道の市町村における災害時備蓄食料の活用・廃棄に関する実態及び防災担当課と行政栄養士との連携の有無を明らかにすることを目的とする。

    【方法】2022年3月,北海道全179市町村の防災担当課を対象に,郵送で自記式質問紙調査を実施した。調査項目は,市町村の人口規模,備蓄食料の使用経験・基準設定・基準内容・基準に対する備蓄量の充足度,備蓄食料更新時の活用状況・活用方法・廃棄理由・更新時期の目安,備蓄食料の取り扱いにおける行政栄養士との連携とした。

    【結果】調査の回答数は179市町村中116市町村 (64.8%) だった。備蓄食料を廃棄せずに活用している市町村は63.5%,一部でも廃棄している市町村は34.8%であった。主な廃棄理由は賞味期限直前まで備蓄しているためが最も多く74.4%を占めた。備蓄食料を全て活用している市町村は,賞味期限の6か月以上前に備蓄食料を更新している割合が高かった。備蓄食料の取り扱いについて行政栄養士と連携を取っていない市町村は94.0%であった。

    【結論】先行研究と比較して,北海道の市町村は備蓄食料の活用割合が低かった。備蓄食料の主な廃棄理由は賞味期限に関するものであり,賞味期限の6か月以上前に更新することが重要であると示唆された。備蓄食料の取り扱いにおける行政栄養士との連携は,ほとんどの市町村で実施していなかった。

feedback
Top