栄養学雑誌
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総説
  • 渡邊 智子
    原稿種別: 総説
    2021 年 79 巻 5 号 p. 253-264
    発行日: 2021/10/01
    公開日: 2021/11/24
    ジャーナル オープンアクセス

     「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」(以下,成分表2020)の利活用のために,成分表2020の特徴と活用方法,特にエネルギーについて解説した。成分表2020の特徴は①冊子版とHP版での公表 ②そう菜41食品の調理済み流通食品類への増加 ③エネルギーの算出方法が変更(エネルギー産生栄養素の変更とエネルギー換算係数の変更)されエネルギー値(以下,2020E)が確からしい値に変更 ④アミノ酸成分表,脂肪酸成分表,炭水化物成分表の充実 ⑤成分表2015追補(2016~2019)の検討結果を反映(ナイアシン当量の追加,新しい食物繊維成分分析法の追加,解説の充実,表頭の変更等)である。栄養計算は,2020Eとそれを計算したエネルギー産生成分を用い,炭水化物エネルギー比率は引き算により算出する方法が確からしい値に近似する。この値の算出のためには,成分表2020の編集が必要である。一方,栄養計算では,従来の2015Eとその計算に用いた成分で行う方法や,2020Eと2015Eの算出に用いた成分で行う方法もある。どの方法で行うかは目的に応じて決定し計算結果には,どの方法かを明記する。栄養計算を実摂取栄養量に合わせるために,レシピ重量から調理後の成分値が計算できるように,生 100 gの調理後重量当たりの成分値を計算し登録しておくと便利である。

原著
  • 平池 妙子, 百木 和, 羽生 大記
    原稿種別: 原著
    2021 年 79 巻 5 号 p. 265-275
    発行日: 2021/10/01
    公開日: 2021/11/24
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】入院時の栄養状態を評価し,入院前と同じ療養環境に退院復帰できなかったものの特徴を明らかにすることを目的とした。

    【方法】2014年9月から2015年10月に入院した65歳以上の患者307名のうち,14日以内の急性期死亡退院及びターミナル目的の入院3名と入院時データ欠損23名,研究時点で入院中2名を除外した279名を解析対象とした。退院時の転帰として,在宅復帰あるいは入院前と同じ施設へ再入所となった者を復帰群,入院前と同じ療養環境への退院復帰が不可能であった者を非復帰群とし,入院時栄養状態について2群間の比較検討を行った。

    【結果】復帰群192名,非復帰群87名であった。復帰群に比べ非復帰群の方が高齢で,MNA-SF,Barthel Index,体格指数(BMI),下腿周囲長(CC),血清アルブミン値が低く,併存疾患が多く,平均在院日数が長かった。非復帰に寄与する入院時の要因を解析するために多変量Cox比例ハザード解析を行ったところ,入院時BMIが 20 kg/m2 未満であることがハザード比(HR)1.50(95%信頼区間:CI 0.90~2.50),CCが 31 cm未満であることがHR 1.30(95% CI 0.63~2.68),上腕筋囲が男性 22 cm未満,女性 20 cm未満であることがHR 1.42(95% CI 0.81~2.50)を示したが,いずれの栄養関連項目も非復帰に対して有意に関連する要因ではなかった。

    【結論】入院前と同じ療養環境に退院復帰できなかった者の特徴として,今回の検討においては検出できる差は認められなかった。

  • 小切間 美保, 岸田 友里, 岡本 梢, 長束 美紗希, 掃部 美咲, 吉本 優子, 大月 晃子, 小川 麗, 八竹 美輝
    原稿種別: 原著
    2021 年 79 巻 5 号 p. 276-285
    発行日: 2021/10/01
    公開日: 2021/11/24
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録

    【目的】小学生の「調理経験」が「自尊感情」,「食事観」に影響し,これらを介して「教科に対する関心」に影響するという既報の因果関係モデルを用いて再現性を検討した。

    【方法】調査項目と対象校は既報に同じとし,小学5年生を対象に2017年と2018年の2回調査を行った。481名の結果を用いて,質問項目の分類ごとに探索的因子分析,既報モデルを用いた共分散構造分析を行い再検証した。そして,調査年別2群の多母集団同時分析により再現性の検討を行った。

    【結果】探索的因子分析の結果,「調理経験」は6因子,「自尊感情」4因子,「食事観」1因子,「教科に対する関心」2因子を得た。共分散構造分析の結果,モデルの適合度はGFI=0.977,AGFI=0.956,RMSEA=0.037と良好であった。「調理経験」は「食事観」と「自尊感情」へ有意なパス係数0.74,0.83(p<0.001)を示し,「自尊感情」は「教科に対する関心」へ有意なパス係数0.75(p<0.001)を示した。多母集団同時分析の結果,因子間のパス係数に両群間で有意差はなく,因果関係モデルに差がないと判断した。

    【結論】「調理経験」が「自尊感情」に影響し,「教科に対する関心」に影響するというモデルの再現性が認められた。一方,既報と異なり,「調理経験」と「教科に対する関心」については,「食事観」の媒介的影響は低いと考えられた。

研究ノート
  • 井邉 有未, 赤松 利恵
    原稿種別: 短報
    2021 年 79 巻 5 号 p. 286-292
    発行日: 2021/10/01
    公開日: 2021/11/24
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】高校生や成人では,咀嚼習慣と肥満の関連が知られている。本研究では,小・中学生を対象に咀嚼習慣と肥満の関連について学年区分別に検討する。

    【方法】港区教育委員会が実施した小・中学生対象の食育に関するアンケート調査のデータを使用した。体格,咀嚼習慣について,男女,学年区分別にχ2 検定を行った後,痩身傾向・標準体重と肥満傾向の2群に分類し,男女別に肥満と咀嚼習慣について,χ2 検定,ロジスティック回帰分析を行った。

    【結果】解析対象は,平成30年1月現在港区の小・中学校に通う計8,704人だった(解析対象率95.0%)。ロジスティック回帰分析の結果,未調整のモデル1,学年で調整したモデル2,学年,身体活動,朝食頻度,夜遅い食事,就寝時間,スマートフォン使用時間で調整したモデル3で,噛まない子どもは,噛む子どもに比べ,痩身傾向・標準体重より肥満傾向である可能性が示された[モデル1:男子のオッズ比2.17(95%信頼区間1.69~2.78),女子2.06(1.34~3.20);モデル2:男子2.14(1.67~2.75),女子2.04(1.32~3.16);モデル3:男子1.94(1.50~2.52),女子1.89(1.20~2.98)]。

    【結論】小・中学生において,よく噛まずに食べる咀嚼習慣は,学年や肥満に関連する生活習慣で調整すると,男女とも肥満に関連していた。

  • 高畑 彩友美, 小谷 清子, 吉本 優子, 福田 小百合, 尾崎 悦子, 東 あかね
    原稿種別: 短報
    2021 年 79 巻 5 号 p. 293-301
    発行日: 2021/10/01
    公開日: 2021/11/24
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】京都府内の大学の学生食堂において,行政が推進する地産地消・食環境整備事業の登録と,食事と食情報の提供実態を明らかにし,大学生の健康増進のための食環境改善について検討すること。

    【方法】京都府内の全34大学11短期大学の全72食堂の食堂運営者を対象とした自記式質問調査を2017年に実施した。運営主体によって組合事業組織が運営する食堂(以下,「組合」)と,一般事業者が運営する食堂(以下,「一般」)に区分,さらに,行政が推進する食環境整備事業への登録状況から,登録群と非登録群に分けて比較した。調査項目は,食環境整備事業への登録,食事提供の形態,食事の内容,食・健康情報の提供内容等の12項目である。

    【結果】63食堂(「組合」33件,「一般」30件, 回答率87.5%)から回答を得た。行政が推進する食環境整備事業への登録は「組合」20.0%,「一般」34.5%であった。「一般」では非登録群と比較して,登録群では野菜料理,米飯量の調節,魚料理,定食の提供の割合が有意に高値であった。食情報の提供の割合は,登録群,非登録群間に差はなく「一般」より「組合」で高値であった。

    【結論】食環境整備事業への登録が「一般」での健康的な食事の提供と関連している可能性が示唆された。今後,行政,大学及び食堂運営者が連携し,学生食堂の食環境の改善と新しい形態の食情報提供により,学生の健康増進を図ることが望まれる。

  • 小田 麗子, 永井 由美子
    原稿種別: 短報
    2021 年 79 巻 5 号 p. 302-310
    発行日: 2021/10/01
    公開日: 2021/11/24
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】大阪市内の高等学校に通う高校生の食育への関心度からみた,食知識・配慮・調理技術・食の主観的評価の実態を明らかにすること。

    【方法】大阪市立A高等学校の全校生徒686名を対象に,無記名自記式質問紙調査を行った。因子分析により抽出された「食育関心度」(食育とは知っているか・食育の情報を得られているか・食育について関心があるか・食育は自分にとって必要か)の回答から,「食育関心度」高群と低群の2群に分けた。さらに食知識,調理技術などの各質問項目の回答は,2群に分け,「食育関心度」高群,低群の回答の分布をχ2 検定で比較した。

    【結果】「食育関心度」高群は低群と比べ,食に関する知識(主食・主菜・副菜について,1日の食事バランス,食品表示を見る方法,伝統的な料理や行事食について,和食がユネスコ文化遺産となったこと)を知っている者,食生活(栄養バランスよく,野菜を多く食べる,加工食品を取りすぎない,塩分をとりすぎない,食品表示を見る)についての配慮をしている者,調理(だしのとり方,煮物調理,揚げ物の調理,一汁三菜)ができる者の割合が有意に高く,食事が満足,楽しいと思う者の割合も高かった。一方,「食育関心度」低群は,穀類,野菜類の摂取が1日1回以下の者の割合が高かった。

    【結論】高校生において,「食育関心度」と食知識・配慮・調理技術・食の主観的評価の実態には関係性があることが示唆された。

資料
  • 近藤 位旨, 石見 佳子, 東泉 裕子
    原稿種別: 資料
    2021 年 79 巻 5 号 p. 311-319
    発行日: 2021/10/01
    公開日: 2021/11/24
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】食品衛生法の改正により,「特別の注意を必要とする成分等を含む食品による健康被害情報の収集」が定められた。また,健康食品が原因とされる重篤な健康被害として肝機能指標の悪化が最も多いことが報告されている。これらのことから,肝臓への影響に焦点を当てた健康食品の安全性研究が急務であると考えられる。そこで,本研究は,肝臓を介した健康被害が予測される健康食品成分の探索を目的とした。

    【方法】健康食品素材に関するデータベース,「機能性食品素材便覧」(書籍),「「健康食品」の安全性・有効性情報データベース」(web;2004年~2019年7月の情報を利用),「健康食品・サプリメント[成分]のすべて2017」(書籍)を用いて,肝機能指標および肝臓薬物代謝への影響が示された食品素材および成分を抽出した。

    【結果】1,313素材の健康食品素材情報が得られ,これらのうち211素材では肝臓への影響に関する情報が含まれていた。これら211素材の含有成分として,上位はタンニン(26件),フラボノイド(20件),サポニン(11件)等が認められた。211素材のうち,57素材がポリフェノール類を含む素材であった。

    【結論】ポリフェノール類などを含む健康食品素材において肝臓への影響が示唆された。肝臓への影響と健康食品成分との因果関係を推定するために,今後,細胞および動物試験における検討が必要と考えられた。

  • 神原 知佐子, 野村 希代子, 中磯 知美, 岡 壽子, 杉山 寿美
    原稿種別: 資料
    2021 年 79 巻 5 号 p. 320-329
    発行日: 2021/10/01
    公開日: 2021/11/24
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】医療施設における栄養管理において,管理栄養士・栄養士がどのような目的と意識を持って治療食献立に牛乳を組み込んでいるのかを明らかにするために治療食献立への牛乳の使用実態を調査した。

    【方法】関東・関西・中国・四国地方の200床以上の医療施設967施設に,常食,糖尿病食,腎臓病食,高血圧症食,高中性脂肪血症食,高コレステロール血症食における牛乳使用を郵送による無記名紙面自記式アンケート調査を行った。

    【結果】234施設から回答を得た(回収率24.2%)。牛乳は毎日朝食時に提供されることが多く,その理由として「院内約束食事箋の栄養基準に適合させるため」「その時間での摂取が一般的」「その時間の食事の栄養量が少ない」「その時間の食事の品数が少ない」が多く回答された。また,管理栄養士・栄養士は,献立作成や栄養教育の場面では,嗜好性よりも牛乳に含まれる栄養素の量を優先していた。しかし,患者からの要望への対処方法としては「代替食品を利用する」との回答が多く,「牛乳提供の理由を説明する」は少なかった。

    【結論】医療施設の管理栄養士・栄養士は,牛乳に含まれる栄養素を患者に摂取させるために,治療食献立に牛乳を組み込んでいた。患者個人の嗜好に配慮した場合には,栄養学的な役割を患者に説明することは少なく,牛乳でない代替食品を提供していた。

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