【目的】大学生を対象に,子どもの頃の経験,食教育と現在の食生活リテラシーとの関連を明らかにする。
【方法】2022年6月末~7月に兵庫県内の1大学に通う1~4年次の大学生男女を対象にGoogleフォームを用いた質問紙調査を行った。調査では現在の属性,現在のメディア平均利用時間(分/日),現在の栄養や食事に関する書籍の平均読書時間(分/日),食生活リテラシー,現在の食環境,子どもの頃の経験・食教育について調査した。食生活リテラシー尺度得点を2群(高群/低群)に分け,子どもの頃の経験,食教育との関連について群間で比較した後,二項ロジスティック回帰分析を用いて解析した。
【結果】交絡因子で調整した二項ロジスティック回帰分析の結果,男性(n=129)では,「子どもの頃に本を読んでいた」,「食事の時刻が決まっていた」,「体によい食べ物や栄養についての会話をしていた」,「『3つの食品グループ』による栄養のバランスについて話をしていた」,「食品に含まれる栄養素について話をしていた」人において,女性(n=184)では,「体によい食べ物や栄養についての会話をしていた」人において食生活リテラシー尺度得点高群のオッズ比が有意に高かった。
【結論】男女共に子どもの頃に体によい食べ物や栄養についての会話をしていたことに加え,男性では子どもの頃に本を読んでいたこと,食事の時刻が決まっていたことなどが現在の食生活リテラシーの高さに関連していた。
【目的】生活保護利用世帯の食料支出状況について,対象世帯の合計および世帯類型別に,5年間の経年変化を明らかにする。
【方法】2017年度から2021年度に厚生労働省が実施した「社会保障生計調査」において,調査対象年度の全月で家計簿による家計記録を実施し,12か月の実収入の平均値が最低生活費を超えた3,961世帯を解析対象とした。統計解析は,各年度の1か月分に平均化した実収入および食料を含む実支出を目的変数,各年度を説明変数とし,単回帰分析を実施した。
【結果】生活保護利用世帯の食料の合計支出額に,5年間で有意差は認められなかった。食料の内訳別では,穀類と外食の支出が有意に減少し,果物,油脂・調味料,菓子類,酒類の支出が有意に増加した。世帯類型別の解析は,全ての世帯類型で菓子類の支出が有意に増加した。2021年度の食料の内訳は,高齢者世帯が野菜・海藻や果物の支出割合が最も多く,菓子類と外食の支出割合が最も少なかった。母子世帯は肉類と菓子類の支出割合が最も多く,魚介類,果物,調理食品の支出割合が最も少なかった。
【結論】生活保護制度により最低生活費が保障されている生活保護利用世帯では食料の支出額が一定に維持されていることが推察された。食料の支出状況は各世帯類型で共通する点と異なる点が見られ,各世帯類型の特徴を考慮した栄養教育の方法や健康管理に対する支援の在り方を検討する重要性が示された。
【目的】食物アレルギー対応食品専門小売業者からみた災害時の患者支援のあり方を明らかにする。
【方法】東日本大震災発生直後から患者支援を行った被災地の業者Aの社長と社員の計2名を対象に2023年7月にインタビューを実施した。逐語録を作成し,各項目に関する参加者の発言を抜き出した。
【結果】支援物資の受け取りに人手や時間,保管場所が割かれ,受け取りを余儀なくされた業者や病院等の負担となったこと,業者と地方自治体の災害時の協働のためには,事前の話合いが必要であること,長期にわたる過剰な支援物資は経済復興を妨げること等,過去に指摘されてきた課題が業者からの聞き取りにおいても確認できた。受け取り側の同意を得てから支援物資を送ること,物資を提供する企業等は,物資を募る支援団体やそこでの活用法を事前に精査してから提供を決める必要があること,平時の給食の食物アレルギー対応が公的備蓄の更新においても重要であること,在宅避難者の把握と支援には,業者の顧客情報や,教育・医療機関の持つ情報の活用が有効であることが新たに明らかとなった。
【結論】企業や支援団体が支援物資を送る際には,被災地の状況や患者に物資を届ける仕組みの有無等を確認しておく必要がある。また,顧客名簿や医療情報の活用には個人情報の保護等の体制を整えておく必要がある。
【目的】社員食堂における夜間の健康的なセットメニュー提供が,交替制勤務者のメタボリックシンドローム(以下,MetS)指標,体調,食態度に及ぼす効果を評価すること。
【方法】研究デザインは層別無作為化比較対照試験とした。研究参加者(製造業1社の男性交替制勤務者48名)を年齢(中央値;41歳以上)とBody Mass Index(肥満;25 kg/m2 以上)で,介入群23名,対照群25名に層化無作為割付した。介入群は,20分間の栄養教育を単回受け,2カ月間,夜勤時の社員食堂(食事時刻20:20~22:00)で16回,健康的なセットメニューを摂取した。対照群は,同じ期間に普段通りのメニューを摂取した。介入前後の調査・測定で体重,体組成,血圧,血液生化学検査値,体調,食態度のデータを得た。
【結果】介入群では対照群と比べて,介入後の腹囲減少量が多い傾向がみられた(中央値[25パーセンタイル,75パーセンタイル]介入群-1.0[-1.5,1.0]cm vs. 対照群 0.25[-0.95,1.0]cm,p=0.067)。他のMetS指標の変化量は両群で有意な差はなかった。体調と食態度に関する主観的評価項目は,いずれも介入群が対照群よりも有意にスコアが高かった。
【結論】交替制勤務者において,夜間の健康的なセットメニュー摂取と栄養教育が,腹囲減少や体調・食態度を改善する可能性が,対照群との比較において示唆された。
【目的】コロナ禍と制限解除後における給食時間中の会話状況,制限解除後における食に関する主観的QOL(以下,SDQOL)と食生活との関連について明らかにする。
【方法】公立小学校6校の児童を対象として2023年7月に自記式質問紙調査を行い,調査時点と1年前の状況を尋ねた。2時点(コロナ禍最中と制限解除後)での変化を記述するとともに,SDQOLの高低及び自発的会話状況の多少で2群に分け,各項目の状況を比較した。
【結果】2時点の比較では,男女ともに自分からの発話が増加し,給食時間が楽しいと思う児童も増加した。しかし,実際に給食時間中に発話をしていると回答した児童は半数以下であった。2時点において,SDQOLの2群間で,残食する頻度や給食の楽しさに差が認められた。制限解除後の時点では,SDQOLの2群間で給食時間中の会話意欲に差が認められ,自発的会話状況の2群間では会話しながらの食事の楽しさ及び会話意欲に差が認められた。
【結論】会話をしながら給食を食べたいが,実際に自分から発話をする児童は少なく,依然としてコロナ禍による黙食の影響が残っていた。このような児童を含めた支援を検討することで,黙食解除後の学校給食において,児童の生涯にわたる食育の観点からより効果的な支援に繋がると考えられた。
【目的】栄養教諭及び学校栄養職員(以下,栄養教諭等)の配置校(以下,所属校)と配置されていないが給食提供及び食に関する指導の対象校(以下,受配校)の違いにより,栄養教諭等の食に関する指導に差があるかを明らかにする。
【方法】10都府県の栄養教諭等を対象としWebアンケートを行った。食に関する指導の実施状況を所属校と受配校で比較するためWilcoxonの符号付き順位検定,χ2 検定を行った。さらに,交絡因子を調整した関連を検討するため一般化推定方程式・二項ロジスティックモデルを行った。
【結果】授業の年間実施回数の中央値は,栄養教諭で所属校8回,受配校2回,学校栄養職員で所属校3回,受配校1回と,受配校は所属校より少なかった。給食の時間に「ほぼ毎日」訪問すると回答した割合は,栄養教諭で所属校43.8%,受配校3.2%,学校栄養職員で所属校25.0%,受配校3.1%と,受配校は所属校より低かった。受配校は所属校と比べて栄養教諭による年間授業回数が5回以下であるオッズ比が3.42,学校栄養職員による年間授業回数が1.5回以下であるオッズ比が3.18であった。給食の時間の訪問頻度は,栄養教諭で月1回以下であるオッズ比が10.77,学校栄養職員で年に10回未満であるオッズ比が5.93であった。
【結論】受配校は所属校と比べて栄養教諭等による授業の実施回数が少なく,給食の時間の訪問頻度が低かった。