栄養学雑誌
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実験的動脉硬化症の治癒におよぼす植物性油脂の科影響
鈴木 秀雄
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1969 年 27 巻 6 号 p. 251-256

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抄録

うさぎ♂45匹を318日飼育して, そのうちコントロール群15匹を除いた30匹について最初の140日間を動脉硬化発生食で飼い, その後は標準食と10%米油食とに切替えて, 動脉硬化の治癒経過を追求した。その結果を要約すると次の如くであった。
1) 標準食切替群も米油切替群も動詠硬化発生当時より全身的にまた諸内臓の各所見においても著明に治癒の傾向を示した。即ち, 動脉硬化発生食に伴う体重や全血比重は回復し, コントロール群と全く同じになり, また, 肝, 脾臓, 副腎の肥大も減少しコントロール群に近くなった。更に化学的所見, 例えば血清コレステロール, 肝コレステロール, 肝脂肪量, 大動脉コレステロールなどにおいても著明に減少してきてコントロール群に近づいた。
2) 大動脉所見は大動脉コレステロール含量と平行関係にあってよく一致した。一方, 血清コレステロール水準は大動脉コレステロールを直接表わすというよりも, むしろ肝コレステロールの如き貯蔵性のコレステロール水準との関係が深い様相がうかがえた。
3) 標準食切替群と10%米油切替群との間の治癒傾向の差異は, 米油群の方が肝コレステロール, 大動脉コレステロール, 大動脉所見などにおいて治癒経過の良好な傾向を示したが, この実験条件では期待した程の差異は認められなかったので, なお実験条件などの検討が必要と考えられる。
4) 前回の成績と併せ考えるとコーン油や米油などの植物油は, 一度発生した動脉硬化症に対してもある程度の治癒力をもたらすことが結論としていえよう。
しかし, 何れにせよ一度発生した動脉硬化はその治癒に非常な時期を要し, 根治は困難と思われるので治癒より予防に重点をおくべきものといえよう。

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