映像学
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論文
エディスンによるロール・フィルム式キネトグラフの開発
藤田 純一
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2020 年 103 巻 p. 29-53

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抄録

エディスンが発明したキネトグラフとキネトスコープは、開発当初の1888年から、ロール・フィルムの使用を想定に入れていた。当初シリンダーに感光乳剤を塗布する、あるいはシリンダーを撮影用フィルム(セルロイドのシート状フィルム)で覆うという発想で進めていた実験は、ある時期からセルロイドのロール・フィルムを用いるようになる。先行研究においては、この変化は1889年8月にエディスンがパリを訪れた際に、フランスの生理学者マレーと出会い、当時マレーがクロノフォトグラフィの撮影に使用していた、紙ベースのロール・フィルムを知ったことがきっかけとなり、そこで初めてロール・フィルムの使用を思いついた、とされる場合がほとんどである。しかし、エディスンや従業員達は、エディスン渡仏以前からセルロイド・ロール・フィルムを実験に使用していたと裁判で証言しており、イーストマンは、1889年7月から10月の間のキネトグラフ開発担当者ディクスンとイーストマン社との間で交わされた手紙を裁判資料として提出し、8月24日に販売用のフィルム一巻き分をエディスンの研究所に送付したと裁判で証言している。これらの証言が正しいならば、エディスン渡仏後にロール・フィルムの使用を思いついた、という説は成り立たないことになる。本論文では、エディスン等が主張するように、エディスン渡仏以前にセルロイド・ロール・フィルムの使用が可能であったかを検討する。

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