映画の保存修復は、映画というメディウムに内在する「複製」のプロセスを保存修復用途に適用することである。デジタル修復ではプリンティングはスキャニングに代替されたが、ステップ・プリンターとエリア・スキャナー、コンティニュアス・プリンターとライン・スキャナーは構造的に対応しており、技術の連続性が見られる。
経年劣化による収縮・変形・脆弱化等への対応という課題は、アナログではオプティカル・プリンターによって主に担われていたが、映画のデジタルシフトに伴い、スキャニングにおいても劣化フィルムへの許容度が競われるようになった。傷消しのためのウェット処理は拡散光により代替され、オリジナル・フィルムの濃度や階調を精確に捕捉するためのキャリブレーションはHDR技術へと移行した。
2010年代にはマス・デジタイゼーションの需要に呼応するように、高速かつ低価格のストロボ型スキャナーが登場し、廉価なソフトウェアの普及と相まって小規模機関や個人の参入を可能にした。これは「イメージングの民主化」と呼べる現象をもたらした一方、物質としてのフィルムとイメージとの結びつきを弱め、真正性に関わる共通の価値観を失わせた。
結果、AI着色や加工が氾濫し、オリジナルのフィルムは「収蔵による忘却」の危険に晒されている。現在の視座から、映画の保存修復における複製の工程を批判的に検証することは、イメージと物質との失われた紐帯を記録(ドキュメンテーション)によって仮構する試みの第一歩となる。
抄録全体を表示