2020 年 103 巻 p. 73-90
本論文では、1916年から1919年にかけて活動したユニバーサル社の子会社、ブルーバード・フォトプレイズに着目する。同社は設立当初、作品の質を重視し、5リールの長編劇映画を週に1本公開するという理念を打ち出した。1910年代は、映画製作の主流が短編やシリアルから長編へと変化していった時代であり、ブルーバード社の活動に着目することは、ユニバーサル社の長編劇映画への取り組みを考える上で非常に重要である。
ブルーバード社は同時代の日本映画へ与えた影響がよく知られている一方で、アメリカ映画史においては長い間忘れ去られた映画会社であった。しかし、近年のフェミニズム的な映画史再考の流れによって、同社は非常に多くの女性監督の作品を製作していたことが明らかになり、ようやく本国アメリカにおいても注目を集めつつある。しかし同社の全貌は未だ謎に包まれており、まとまった文献も存在していないのが現状である。
そこで今回は、ブルーバード社の3年の活動期間に着目してその変遷を追いつつ、同社に在籍した3人の女性監督、ロイス・ウェバー、アイダ・メイ・パーク、エルシー・ジェーン・ウィルソンの活動を論じ、その影響を明らかにすることを目指す。