2016 年 11 巻 1 号 p. 135-153
本研究では,石川県能登地域の海藻類と魚醤を事例とし,当該食材の利用からみた「(文化上の)能登地域」見出すことを試みる.地域住民による10種の海藻の利用頻度の差を確認すると,羽咋市以北の地域で一定の利用が継続し,特に奥能登では海藻類が多用されている.この地域範囲を海藻利用からみた能登地域と考えることができる.一方魚醤は,調査地域全域で海藻類と比べると食卓で利用される頻度が低い.くわえて,魚醤の利用頻度は奥能登と奥能登以南の地域,加賀とのあいだで大きな差がみられた.海藻類以上に魚醤は,「奥能登」の食材と位置づけでき,奥能登のひろがりをとらえる一つの指標とできる.