E-journal GEO
Online ISSN : 1880-8107
ISSN-L : 1880-8107
調査報告
食料品アクセスおよび家族・地域住民との繋がりを指標としたフードデザートの析出—県庁所在都市の都心部における事例研究—
岩間 信之浅川 達人田中 耕市駒木 伸比古
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 11 巻 1 号 p. 70-84

詳細
抄録

本研究の目的は,住民の買い物利便性(食料品アクセス)および家族・地域住民との繋がり(いわゆるソーシャル・キャピタル)を基にフードデザート(以下FDs)を析出するとともに,FDsの特徴を地理学的視点から明らかにすることにある.研究対象地域は,関東地方の県庁所在都市A市の都心部である.分析の結果,低栄養のリスクが高い高齢者は,全体の49%に達した.地区別にみると,都心部のなかでも市街地中心部と市街地外縁の一部において,低栄養高齢者の集住がみられた.なかでも,市街地中心部において食生活の悪化が顕著であった.市街地中心部ではソーシャル・キャピタルの著しい低下,市街地外縁では食料品アクセスとソーシャル・キャピタルの相対的な低さが,高齢者の食生活を阻害する主要因であると考えられる.従来,FDs問題研究では買い物先空白地域に注目が集ってきた.しかし本研究から,ソーシャル・キャピタルが希薄な大都市中心部でも,FDsが存在することが明らかとなった.

著者関連情報
© 2016 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top