2016 年 11 巻 2 号 p. 489-501
福島第一・第二原子力発電所が立地している4町の中で,放射能の線量が低い楢葉町では,2015年9月5日に避難指示が解除されている.しかし,その後,約1年間を経過しても,帰還者の比率は1割にも満たない.その原因は,長い避難生活の中で避難先において生活の基盤が確立してしまったことだけでなく,帰還が可能となった後の楢葉町がもはや災害前の姿ではなくなってしまっていることにもある.本稿では,住民が生活することができなかった4年半の間にどのようなことが生じ,そのことが避難指示解除後の地域の有り様と町づくりにどのような影響を及ぼしているのかについて分析する.