2017 年 12 巻 2 号 p. 192-208
2000年代以降,国産紅茶の生産が拡大している.本稿は紅茶の栽培好適地とされる沖縄を例に,その生産者群の経営的・技術的性格を明らかにした.生産者群は,緑茶生産本位の生産者と「プレミアム紅茶」を追求する生産者に大別された.前者の生産と販売が,緑茶生産におけるそれらの延長上にあったのに対し,後者は,紅茶に即した生産・販売体制を構築する.すなわち,生産においては労働手段を高度化せずに,生産者が技能性を発揮してこれを補う.販売では,商品のもつスタイルを明確化できる販路を新たに構築する.これらのため,前者には生産組織化の可能性があるが,後者はその契機に乏しい.国産紅茶の廉価品市場が成立していない日本においては,前者と後者の間は段階的関係としてとらえられるであろう.