E-journal GEO
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調査報告
ユキヒョウとモンゴル遊牧民のコンフリクト―オーラルヒストリーで読み解く目撃・遭遇事故と家畜被害―
相馬 拓也
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2017 年 12 巻 2 号 p. 217-232

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抄録

モンゴル国内には現在600~900頭前後のユキヒョウが生息すると考えられている.特に西部地域のホブド県,バヤン・ウルギー県では,ユキヒョウと遊牧民の目撃・遭遇事故,家畜被害が多数報告されている.こうした「ユキヒョウ関連事故」は2014年を境に急増し,遊牧民も家畜襲撃被害に対して,ユキヒョウを私的に駆除する応酬的措置が複数確認されている.本調査では2016年7月19日~8月22日の期間,ホブド県ジャルガラント山地,ボンバット山地,ムンフハイルハン山地のユキヒョウ棲息圏に居住する117名の遊牧民から遭遇体験や「ユキヒョウ関連事故」についての遡及調査,履歴調査の構成的インタビューを実施した.両者間関係の改善には遊牧民側の放牧態度や保全生態への姿勢のあり方にもあり,ユキヒョウと遊牧民の関係改善とサステイナブルな共存圏の確立は,ユキヒョウの保全生態の観点からも最重要課題といえる.

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© 2017 公益社団法人 日本地理学会
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