近年,日本各地において伝統野菜や地方野菜などのタネ(固定種)の重要性が認められるようになり,種苗交換会はそれらの多様性を保全する取組みとして開催されている.本稿では,埼玉県日高市の農家ネットワーク「たねのわ」が主催する種苗交換会の出品品種と参加者の特徴を報告し,その可能性と課題について考察する.参加者は,近隣の山地部や平地部を含めたさまざまな地域から集まり,約半数は営利を目的としない非農家であった.このことは各地の多様な品種が集まり,採算性が低い品種の生産も守られていることを示唆している.出品品種の特徴は,いずれかの地域の在来野菜に由来する固定種であり,採種,挿し芽,苗作りが容易なことであった.これまでに報告されていない,近隣の山地地域に所縁がある在来野菜についても多くを見出すことができた.これらから,種苗交換会は在来野菜の固定種の保全や発掘において重要であり,明確に貢献していると結論した.