E-journal GEO
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調査報告
愛媛県宇和島市宇和島地区の養殖業者による出荷対応の実態とそれを可能とする要因
穂積 謙吾
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2021 年 16 巻 1 号 p. 160-175

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抄録

本研究は,愛媛県宇和島市宇和島地区の養殖業者における出荷対応の実態を,ブランド品の生産ならびに中間流通業者との取引関係に注目して解明し,一連の対応を可能とする要因を考察した.ブランド品は事業収入の安定化を目的に,労働力規模が大きい一部の養殖業者により生産されていた.ただし,宇和島地区においてブランド品は副次的であり,大多数の養殖業者は負担が軽いノンブランド品に特化していた.安定的な価格よりも経営上の負担軽減を優先する出荷対応は,ノンブランド品の流通形態である市場流通を中間流通業者が重視しているため可能になっていると考えられる.ノンブランド品を生産する養殖業者は,取引を行う中間流通業者の数を選択し,取引により得られた情報を経営に活用していた.これらの対応は,出荷先の中間流通業者を問わず一律であるノンブランド品の出荷価格や,中間流通業者との相互依存性により可能になっていると考えられる.

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© 2021 公益社団法人 日本地理学会
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