2022 年 17 巻 1 号 p. 23-45
大規模災害が発生してからの救援活動と避難生活を向上させる必要があるという問題意識のもと,避難生活を支える効果的な救援活動拠点の配置に関する研究を提起する.救援活動拠点とは届いた物資や人員を被災世帯や避難所へと中継する拠点である.まず,災害研究のステージと地理学,特に救援活動期における被災地と発出拠点の関係を整理した.次に,南海トラフ地震が発生した際には大きな被害が想定され,過疎化や高齢化の進行している和歌山県日高郡を事例として,現状の救援システムを地図上に描き出すとともに課題の把握を行った.さらに,その課題を埋める救援活動拠点の候補として,旧役場所在地や学校,寺院に着目し,効果的な救援システムのあり方を検討した.また,こうした大規模災害時の救援システムを論じる上で従来の地理学の研究蓄積が貢献できる余地があることを指摘した.