E-journal GEO
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調査報告
高校生の昆虫食に対する意識と試食を伴う講義の効果
佐賀 達矢野中 健一ファン イッテルベーク ヨースト
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2022 年 17 巻 2 号 p. 350-362

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抄録

伝統的な昆虫食文化を理解することは環境と人間の関係を含めた生物資源利用の本質的な理解につながると考え,高校生を対象に昆虫食の試食を伴う講義を行った.ここで得られたアンケート・感想から高校生の昆虫食の経験やとらえ方,講義の効果を分析した.昆虫食が食料問題の解決策になるという国連食糧農業機構(FAO)の提言を知っている生徒は多かった一方で,昆虫食文化がある地域の人々は食料不足だから昆虫を食べるという誤った見方も見られた.講義後には,多くの生徒が昆虫食を肯定的にとらえ,社会文化的な視点を身につけられた.予想に反し,現在も伝統的な昆虫食文化が残る岐阜県東濃地域の高校生の方がそうでない地域の高校生よりも昆虫食に対して抵抗感をもっていた.講義後には,日々の食生活を充実させるために昆虫食文化があることに気付いたという感想が多く,生徒に単なる異文化の理解だけでなく,自他の文化を尊重する態度をもたらすことができた.

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© 2022 公益社団法人 日本地理学会
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