E-journal GEO
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調査報告
外国にルーツのある子どもたちの成育環境と健康被害に関する地理的研究―外国人散在地域での事例研究―
岩間 信之中島 美那子浅川 達人田中 耕市佐々木 緑駒木 伸比古池田 真志今井 具子貝沼 恵美
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2023 年 18 巻 1 号 p. 170-185

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抄録

本研究の目的は,外国人散在地域を事例に,外国にルーツのある子どもたちの成育環境と健康状態の関係を解明することにある.外国人労働者が増加する今日,外国人世帯の生活環境の改善は喫緊の課題である.中でも,外国人散在地域では,外国にルーツのある子どもたちの健全な成育環境の確保が難しいと推測される.そこで本研究では,外国人散在地域に該当する地方都市を事例に,3歳児健診データを分析した.その結果,成育環境の悪化がう蝕(虫歯)などの健康被害を誘引し得ることが明らかになった.特に,所得が低く社会的に孤立していると考えられる外国人世帯の子どもたちの間で,健康被害が顕著であった.一方,社会的統合の程度が高いと推測される世帯では,こうした傾向はみられなかった.社会的排除状態にある外国人世帯は,家族や社会から十分な支援を受けにくい.このことが子どもたちの成育環境を悪化させ,健康被害をもたらすと考えられる.

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© 2023 公益社団法人 日本地理学会
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