E-journal GEO
Online ISSN : 1880-8107
ISSN-L : 1880-8107
18 巻, 1 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
調査報告
  • 筒井 一伸, 小関 久恵
    2023 年 18 巻 1 号 p. 1-21
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/07
    ジャーナル フリー

    政策的議論が本格化して15年近く経過した地域運営組織(RMO)は2020年度には5,783まで増加した.RMOは平成の市町村合併で広域化したことによる地域課題への対応を目指した,2000年代の第二次コミュニティブームの時期に設立されたものが多いが,1970年代前半からの第一次コミュニティブームの中で設立されたものもある.本稿では,前者の例として山形県酒田市日向(にっこう)地区,後者の例として鶴岡市三瀬地区のRMOを事例にその再編過程の実態を明らかにした.その結果,RMO設立という組織再編だけではなく,社会的背景に応じた機能再編が図られているものの,RMOがもつ機能には時代性があり,それにより分離型と一体型の志向性の違いが読み取れた.また三瀬地区ではRMO設立に伴い,基盤となる地区の空間再編が行われたことも明らかになった.

  • 庄子 元, 甲斐 智大
    2023 年 18 巻 1 号 p. 22-32
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/07
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は青森県南部町と秋田県東成瀬村を事例に,特定地域づくり事業協同組合の性格の地域差を明らかにすることである.両地域では地域外からのサポートによって労働者派遣法に対応した運営体制の構築やホームページの整備が進められ,事業協同組合が設立されている.また,南部町では求人のウェブサイト,東成瀬村では地域内のハローワークを通じてマルチワーカーが募集された.そのため,南部町のマルチワーカーは地域外からの新規就農希望者であるのに対し,東成瀬村は地域内居住者が主である.こうした属性の違いから,南部町ではマルチワーカーに対する農業技術の研修を充実させている一方,東成瀬村ではマルチワーカーへの手当を厚くしている.したがって,両地域の事業協同組合は,南部町では新規就農希望者が農業技術を習得する学びの仕組みとして機能しているのに対し,東成瀬村は地域内の居住者が安定して雇用されるための仕組みといえる.

2022年度サマースクール
G空間EXPO2022日本地理学会主催シンポジウム
地理教育総説記事
  • 澤田 康徳, 鈴木 享子, 小柳 知代, 吉冨 友恭, 原子 栄一郎, 椿 真智子
    2023 年 18 巻 1 号 p. 40-53
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/08
    ジャーナル フリー

    本研究ではGLOBEプログラムを例に,身近な自然環境調査成果の全国発表会に関する感想文から,生徒と教員の発表会のとらえ方および生徒の調査の継続志向の特徴を示した.発表会のとらえ方には,生徒の参加や発表,調査に関する観点が生徒と教員に認められた.発表会の多様性は生徒に特徴的な観点で,日本各地や他の学校の環境およびその認識などを含む.すなわち生徒において全国発表会は,自然環境の認識や理解を日本規模で深める場の機能を有する.また,異学年間の活動の継続を考え今後の活動意欲につながっている.教員において全国発表会は,充実した調査の継続に重要な自校の測定環境をとらえなおす場として機能している.生徒の調査の継続志向は,科学的思考より調査結果や探究活動過程全体,生徒をとりまく人と関連することから,継続的調査に,発表会においてとりまく人などと連関させた生徒の振り返りや教員の測定環境のとらえなおしが重要である.

地理紀行
地理教育総説記事
地理紀行
地理教育総説記事
  • 大矢 幸久
    2023 年 18 巻 1 号 p. 92-109
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/29
    ジャーナル フリー

    これまで地誌学習において,カリキュラム作成者や授業者によって恣意的・主観的に設定された「地域性」や「地域的特色」を子どもに無批判にとらえさせる危険性が指摘されてきた.本稿では,地域を社会的に生産された構築物としてとらえ,それを吟味・批判し,地域像の再構成や新しい地域像の創造を目指す地誌学習の授業構成を明らかにした.イングランド地理教育研究やジオケイパビリティ・プロジェクトの成果を踏まえると,社会構成主義的アプローチだけでなく,知識の実在性を重視する社会実在主義的アプローチに基づく地誌学習の構想が求められる.検討の結果,学術研究の成果に基づく学問的知識と子どもの生活経験に基づく日常的知識を問いによって結び付けて地理的概念の獲得・伸長を図る「構築物–再構成型地誌学習」の構成原理および授業過程モデルを提起した.

特集
調査報告
  • 有馬 貴之
    2023 年 18 巻 1 号 p. 114-130
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    本稿では,観光庁の発表した持続可能な観光ガイドラインと日本ジオパーク委員会のジオパーク自己評価表の比較を行った.その結果,日本のジオパーク活動は,運営体制,保護・保全計画,教育,宣伝,解説,自然遺産の把握に重きが置かれる枠組といえる.こうした枠組は持続可能な観光地を目指す地域にも貢献できる可能性がある.一方,日本のジオパーク活動では客観的データの取得やその調査が弱い.ゆえに持続可能な観光を進める上では,客観的データによる状況把握や,有用な指標の開発が急務である.また,人権などの権利関係や,地質や地形に関連する他の自然環境の把握,今後生じうる観光の負の影響への対策への関心が比較的低い点も課題であるといえる.

  • 坂口 豪
    2023 年 18 巻 1 号 p. 131-141
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    浅間山北麓地域では,ジオパーク活動の開始前より,地元住民や自然愛好家が浅間山周辺地域の自然・文化資源を対象にして組織的なガイド活動を行っていた.そうした場所で,ジオパーク認定を目指した活動が始まったことにより,このガイド活動を行っていた人が中心になり浅間山ジオガイドの会が組織された.嬬恋村と長野原町とでジオパーク活動が進められることになると,浅間山ジオガイドの会に所属していなかったガイドも浅間山ジオガイドの会に所属するようになった.そうして,この地域ではジオパークの理念に沿ったガイド活動が行われるようになった.浅間山ジオガイドの会では,外部講師を招いての講座や会員相互での研修が行われ,ガイドのテキストを会員全員で分担して作成するなど,組織でガイド能力を向上させる取組みが進められた.さらにこの会は,ガイド養成講座を開催し,ジオガイドを増員させていった.

  • 鄒 青穎, 田口 一汰, 佐藤 龍之世, 石川 幸男, 檜垣 大助, 蔡 美芳, 五十嵐 光, 山邉 康晴
    2023 年 18 巻 1 号 p. 142-156
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    津軽十二湖地すべり地は,白神山地の最西部,青森県津軽国定公園にある約300年前の地震によってできた地すべりである.そこには,流れ山や舌状小尾根地形や巨礫や湖沼群など,十二湖を形成した地すべりの運動やその範囲を示す痕跡が各所に見られる.ここへの来訪者の多くは,推奨散策ルート沿いに1~4時間滞在し,池とブナ自然林の自然風景を鑑賞するために訪れている.来訪者は,地すべりに関連する池の成因や地形と植生との関係への興味が高いが,地学や地生態学的要素に関する情報は来訪者には伝わっていない.そうしたギャップを解消するため,十二湖の地形のできかたとその上に成り立った地すべり地形と植生の対応関係について調査を行い,それらへの理解が深まる散策ポイントを巡る散策マップを作成した.

地理紀行
調査報告
  • 岩間 信之, 中島 美那子, 浅川 達人, 田中 耕市, 佐々木 緑, 駒木 伸比古, 池田 真志, 今井 具子, 貝沼 恵美
    2023 年 18 巻 1 号 p. 170-185
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/09
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,外国人散在地域を事例に,外国にルーツのある子どもたちの成育環境と健康状態の関係を解明することにある.外国人労働者が増加する今日,外国人世帯の生活環境の改善は喫緊の課題である.中でも,外国人散在地域では,外国にルーツのある子どもたちの健全な成育環境の確保が難しいと推測される.そこで本研究では,外国人散在地域に該当する地方都市を事例に,3歳児健診データを分析した.その結果,成育環境の悪化がう蝕(虫歯)などの健康被害を誘引し得ることが明らかになった.特に,所得が低く社会的に孤立していると考えられる外国人世帯の子どもたちの間で,健康被害が顕著であった.一方,社会的統合の程度が高いと推測される世帯では,こうした傾向はみられなかった.社会的排除状態にある外国人世帯は,家族や社会から十分な支援を受けにくい.このことが子どもたちの成育環境を悪化させ,健康被害をもたらすと考えられる.

2022年秋季学術大会シンポジウム
2022年秋季学術大会巡検報告
2022年日本地理学会秋季学術大会公開講演会
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