E-journal GEO
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調査報告
観光産業のジェンダー不平等――年齢・学歴・雇用形態からみた宿泊業・飲食サービス業における雇用の地域的パターンとそのジェンダー論および観光政策論からみた力学――
福井 一喜
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2023 年 18 巻 2 号 p. 221-246

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抄録

「観光立国」や「観光まちづくり」の担い手は誰なのだろうか.本稿は観光政策論と英語圏のジェンダーの経済地理学の観点から,観光産業の雇用の地域的パターンを解明した.雇用者の半分以上を所得149万円以下の女性の非正規雇用者が占める県は36を数え,市区町村の2/3以上において非正規雇用者の女性率は70%を超える.正規雇用者は主に男性だが,相対的に低賃金な若手の高卒者が多く,非正規の男性や高齢者も増加している.先進諸国のサービス経済化や中間層の退潮,空間の価値上昇政策,それらを背景に地域へ経済的自立を求める観光政策の政治の論理,それを内面化する観光産業の資本の論理,経済活性化を優先する地域活性化論等によって,既存のジェンダー不平等が温存されている.観光産業の主な担い手は低賃金の非正規雇用者であり,それは女性,若年者,高齢者,非大卒者等,各地域の労働市場で高賃金を得にくい周縁化された人々である.

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© 2023 公益社団法人 日本地理学会
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