本研究は,2030年冬季五輪の招致を目指す北海道札幌市を事例に,Müller and Gaffney(2018)が提起したスポーツ・メガイベントの評価項目を用いて,五輪招致の推進派の説明と反対派の主張を比較分析した.その結果,推進派も反対派もその主体や活動が札幌市だけのローカルレベルにとどまらず,東京を中心とするナショナルレベルの組織,さらに欧米を中心とするグローバルレベルの組織と結びつき,各派でグローバルに共有される論理や戦略が導入されていることが確認できた.そのこともあり,札幌市における推進派の説明と反対派の主張は過去の五輪開催都市や立候補都市のそれと類似しており,推進派は五輪が市民に夢と希望を提供し,都市再開発と地域経済・観光集客の活性化に結びつくと説明し,反対派は国際オリンピック委員会(IOC)と五輪の祝賀資本主義的体質を批判し,市民生活に直結する政策の優先実施と招致決定過程への住民参加を求めていた.