E-journal GEO
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調査報告
北海道におけるサケマス内水面養殖場の存続できる地理的条件
室岡 瑞恵安藤 大成宮本 真人楠田 聡内藤 一明
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2023 年 18 巻 2 号 p. 247-257

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抄録

養殖業は世界的にみて重要性を増している.北海道のサケマス養殖業も同様である.今後,北海道のサケマス養殖業を発展させていくために,養殖業のピークであった1991年と2019年の養殖場の分布を地形的な側面から明らかにした.水量は河川水の方が湧水よりも多いが,湧水の方が冬期の温度が高くサケマス類の成長に適し,河川水と湧水を併用している養殖場が多く存続する傾向にあった.水理地質図および地質図では,台地・段丘・扇状地におけるローム台地の境目の地下水量が豊富で採水が容易である所に養殖場が多かった.また,2019年の養殖場は火山フロントとほぼ一致しており,山麓で湧水が出やすい地点の養殖場が存続したと推察される.さらに,河川水を利用する養殖場はほぼすべてが石狩川,十勝川上流,沙流川上流にあった.また,標高の高い地域の養殖場が多く廃業していたことから,都市部から離れた厳寒地は養殖場には向かないと考えられた.

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