2024 年 19 巻 1 号 p. 208-225
本研究は,在日外国人の日本への定住意向と経済的統合(学歴・収入・就労状況)との関連,および新型コロナの流行がその定住意向に与えた影響について検討したものである.分析の結果,定住意向と経済的統合との関連は必ずしも明確ではなく,また,来日の目的によっても異なっていた.移住志向の人の場合は,雇用形態や賃金よりも,就労していること自体のほうが定住意向の形成に重要な要素となっていた.出稼ぎ志向の人の場合,学歴,従業上の地位と収入の効果は確認されなかった.また,約半数の回答者はコロナ禍で収入が減少したと報告したものの,定住意向が弱くなった人は3割未満であった.移住は災害などの緊急事態への対処戦略の一つであるが,収入や資産に乏しい外国人や,ホスト社会に多くの投資をしている外国人にとっては,帰還や再移住の選択肢が制限される可能性がある.