隆起準平原は,デービス,W. M. により提唱された概念モデル「侵食輪廻」の1つのステージであるが,日本列島で隆起準平原とされてきた地形の解釈に対する疑問が近年になって提示されており,定量的な地形解析による見直しが必要である.本研究では,隆起準平原と考えられてきた阿武隈高地の小起伏面について,流域の地形解析を行った.解析対象は,阿武隈高地を太平洋に向かって流れる新田(にいだ)川・古道川・夏井川の流域とした.国土地理院のDEM10BデータからGISを使用して河床縦断面を解析し,小起伏面の境界にあたると考えられる地点の標高を抽出すると300~420 mの間であり,特定の地質条件には依存しなかった.地形解析の結果は,各流域をとりまく分水界の標高にばらつきがあること,および新田川・夏井川の上流域では小起伏面の境界が局地的侵食基準面として機能していることも示しており,阿武隈高地の地形を隆起準平原と解釈することは適当ではないと考えられる.